「WWDジャパン」2000号が11月6日に発売された。1979年の創刊から現在に至るまで、39年分のファッションニュース、時代を象徴するコレクションなど過去を振り返りつつ、現代のデザイナーや経営者たちのインタビューを掲載し、ファッションの未来を探る特大版だ。そこで「WWD JAPAN.com」では2000号の制作に携わったスタッフのコラムを不定期連載としてお届け。この号の編集を通して未来を見つめた、老(?)若男女幅広いスタッフたちの気付きや意見に、くみ取っていただける何かがあればさいわいだ。
今から9年前、2008年に迎えた「WWDジャパン」1500号は96ページの特集号だったのに対し、2000号は過去最大の170ページと前代未聞のタブロイドになりました。2000号では、39年分の“事件”と共に、各ブランドを象徴する「エポックメイキング・コレクション」や、ファッションに情熱を注ぐ業界人の「名言集」を掲載しています。その中で、本紙でも多く登場し、“ファッション業界が生んだ寵児”と呼ばれたアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)にフォーカスをあててご紹介します。
マックイーンが初めて「WWDジャパン」の表紙に登場したのは、1997年5月26日・6月2日合併号。世田谷区・砧の東宝撮影所のスタジオでパリコレを再現し、「ジバンシィ(GIVENCHY)」1997-98年秋冬のショーを行ったときの写真です。当時28歳、ビッグメゾンの重圧がありながらも、はにかんだ表情が印象的。そのマックイーンが96年に「ジバンシィ」のデザイナーに就任して以来、幾度となく繰り返してきた言葉があります。「僕の名前はマックイーン。ジバンシイにはなれない。でも、『ジバンシィ』に新たな風なら吹き込める」。台風の目のような存在として世界中の注目を一身に浴びていたマックイーンでしたが、周囲の喧騒をよそに冷静に業界を俯瞰していたからこその言葉です。ここ数年、ビッグメゾンのデザイナー交代が騒がれていますが、この言葉の重みを感じるデザイナーも少なくないかと思います。
「アレキサンダー・マックイーン」の「エポックメイキング・コレクション」は、1999年春夏のルックをピックアップしています。精緻なカッティングでハードとソフト、エッジーとフェミニンとの絶妙なバランス感覚を披露した“マックイーン”スタイルを標榜するにふさわしいシーズンです。
2000号の本紙では、マックイーンだけはなく国内外のデザイナーや経営者など、時代を切り開いてきた業界人が多く登場しています。その中から2人の名言をご紹介します。山室一幸・元「WWDジャパン」「WWDビューティ」編集長が残した言葉、「今、一番大事なのはファッションへの“愛”」、そしてポール・スミス(Paul Smith)の「ビジネスにはハートがなければならない」。ファッションへの“愛”を持ったスタッフによって作られた2000号で、ファッションを作り上げてきたトップランナーたちの“愛”を感じ取っていただけたら幸いです。