ウィゴーの筆頭株主が11月21日付でブラザー工業の創業一族の資産管理会社であるアラタマコーポレーション(名古屋、安井信之・社長)に移行した。同社の株式を巡っては8月、創業者である中澤征史・社長(当時)が自身の保有する株式88.5%を投資会社のオーチャードコーポレーション(東京、伊藤忠寛・社長)に譲渡。中澤氏は代表権だけでなく、取締役も外れた会長職に退き、新社長に伊藤氏が就いたばかりだった。同社は新しい資本比率などは明らかにしていないが、オーチャードが保有していた88.5%の過半数をアラタマが取得し、残りを中澤氏が買い戻したもよう。わずか4カ月でオーナーが2度入れ替わる異例の事態になった。
21日付でアラタマが保有するアラタマ1号投資事業組合が取得した。同時に伊藤社長が退き、アラタマが招請した米国公認会計士の高橋英朗氏が新社長に就任した。中澤会長は取締役会長になり、役員の立場で采配を振るう。オーチャードが送り込んだ2人の取締役のうち、小塚英一郎氏は残ったが、二木教夫氏は退社した。
再度の経営刷新の背景には、ウィゴーの取引銀行や商社がオーチャードの信用力を不安視していたことがあるようだ。オーチャードのウィゴー買収に際しては、一部経済誌が関係者のコメントを紹介する形でオーチャードの経営の不透明さを指摘していた。ウィゴーはアパレル不況の中、過去5年で売上高を約3倍の350億円(17年2月期)に伸ばすなど、際立った成長を見せてきた。強いリーダーシップをとってきた中澤氏が取締役を外れ、オーチャード主導の経営体制になることに難色を示したという見方が一般的だ。
27日に弊紙取材に応じた中澤会長は「お騒がせしたが、当社の方向性は変わらない。既存の『ウィゴー(WEGO)』では来店を促す劇場型の店作りを強化し、ECや海外出店も加速する。将来的には上場を目指す」と説明した上で、「(新経営体制では)アパレル以外も含めて当社の顧客である若者市場とシナジーが見込める分野のM&Aにも積極的に乗り出したい」と語った。
今回の経営刷新を機に商社との関係強化にも取り組む。ウィゴーの100%子会社で企画・生産を手掛けるブラウニージャパンは、複数の商社との資本提携を進める考えだ。