ファッション

「ドロップトーキョー」ディレクターが語る“現場”にいるからこそわかる東京のファッションシーン

 いま、東京のストリートシーンを語る上で欠かせないスナップサイトが「ドロップトーキョー(Droptokyo以下、ドロップ)」だ。2007年の立ち上げから渋谷、原宿、表参道といった“ストリートスナップの聖地”を拠点に活動を続け、感度の高い人選、独特な色味の写真、一般的なストリートスナップとは一味違うファッション性の高いポージング・ロケーションで若者を中心に人気を集め、インスタグラムのフォロワーは開設から約4年で約26万人と長足の成長を見せている。そして、10月には10年の活動をまとめた集大成の書籍「DROPtokyo 2007-2017」を発売し、来週にはラフォーレ原宿での写真展を控えている。そんな破竹の勢いを続ける「ドロップ」を支えているのが、岩野一真ディレクターだ。「『ドロップ』っぽい」とまで言われるスナップのこだわりや、ストリートという“現場”に常にいるからこそわかるファションの潮流などについて話を聞いた。

WWD:「ドロップ」は、他のサイトと比べ、コントラスト・彩度がかなり強い印象があります。その意図は?

岩野:この時代、ストリートスナップは一眼レフを買わなくてもiPhoneで撮れてしまうように、誰でも撮れるものです。そうなった時に僕たち「ドロップ」の目に映った被写体たちは、非現実のように美化されないといけない。例えばあまりにコントラストが薄いと生っぽくなり過ぎてしまうので、コントラストや彩度を強め、インパクトがある写真に仕上げています。

WWD:以前から同様の加工を?

岩野:時代に合わせています。13〜14年のノームコアの流れの時はファッションが面白くはなかったので、マットな質感を出したくて彩度やコントラストを抑えた“薄い写真”にしていました。いまのインフルエンサーのはしりのような子たちを撮らなきゃいけなかったので、「より人が美しくなる写真ってなんだろう」と考えた結果ですね。

WWD:加工についてはスタッフ同士で話し合いを?

岩野:いや、僕の独断です(笑)。

WWD:彩度・コントラストに加え、モデルが特異な印象もあります。感度の高い人選はどうやって?

岩野:一応10年やってきて、「自分たちがどういう人を撮らなきゃいけないか」って考えた時に、エッジが利いたスタイルを撮りたいとは心掛けています。ただ、「ファッションはいいかもしれないけど、それだけでとりあげるべきなのか」ってことで、その人が“イケてるか、イケてないか”のジャッジはありますね。僕たちの中で“ドロップフィルター”って呼んでいるんですけど、「なんで撮ったの?」って聞かれた時に「ただよかったから」だけじゃなくて、「なんでいいのか」「その子が何をやっているのか」まで、ちゃんと責任を持てるかどうか。「オシャレ=洋服」ではなくて、マインドやカルチャーの部分だったりが確立している子たちを届けたい。

感度の高い人選は、他のメディアと比べて被写体との距離感が近いのが大きいと思います。例えば音楽のジャンルなら、若い世代がどういったところに興味があるのかリサーチがすぐできる。渋谷の古着屋「ボーイ(BOY)」のオーナーのTOMMYくん(奥冨直人)の目利きがスゴいので、そこを頼りながら撮る場合もありますね。

WWD:ストリートスナップなのに洋服のクレジットがほとんどありませんが。

岩野:最近は明記しないようにしています。昔は書きたがっていたんですけど、いまは被写体の子たちが書きたがらないのもあります。フォトグラファーからしてもいい被写体に会える時間は限られているので、すぐ次にいきたいんですよね(笑)。アンケートの必要もないファッションが増えたってのもあります……。それで、人選とも相まってその人たちのスタイルを紹介する軸が強くなってきたので、ウェブサイトのストリートスナップのコンテンツ名を“ストリートスタイル”に変えました。

WWD:ストリートっぽさを出すために心がけていることは?

岩野:それぞれのフォトグラファーには、「その子のファッションが生き生きする場所で撮影してほしい」と伝えています。ストリートスナップってどこで撮ってもいいので、見つけたところで撮ることもあります。でも人を選んで撮っているんだから、「なんでその人を選んだか」、そして、「この人は自分の知っているあそこで撮った方がよりかっこよくなりそう」みたいなのは大切にしてもらってますね。

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