突然ですが皆さん、「ダイエット プラダ(DIET_PRADA)」というインフルエンサーをご存知でしょうか?彼女のインスタグラムのアカウントは「アンタ、ホンマよう見つけるわ!」と感心しちゃう“そっくり”な写真の対比で溢れています。
例えばある時は、「セリーヌ(CELINE)」のイヤリングと、そっくりの「マンゴ(MANGO)」のイヤリングを並べてアップ。しかも、「セリーヌ」のショー会場に、「マンゴ」の“そっくりイヤリング”で現れた女性の写真までアップしちゃう、キュートな(!?)アイロニー(皮肉)の持ち主です。対比はありがちなラグジュアリー&デザイナーズとファスト・ファッションのみならず、某デザイナーズブランドの洋服が別のブランドの洋服に似ているとか、雑誌の表紙がクリソツとか、インビテーションのデザインが激似とか、感心するしかないソックリ写真を見つけては、2枚を並べインスタにアップしているのです。その類似性、いや、もはや相似性は毎回ハイクオリティで、2枚の写真を並べられてしまうと何も言い返せません。きっとデザイナーは、「『ダイエット プラダ』には、コレクションをインスタにアップして欲しくない」と思っているハズ(笑)。でも、一フォロワーからすれば、そんな「ケンカ上等」感さえ漂う“ゴシッピー”なカンジがたまらなく楽しいんです。
フォロワーは、わずか1年前には「やった〜、1000フォロワーだ!」なんて喜んでいたのですが、気付いたら12万8000!そして2018年春夏シーズンは、ついに「グッチ(GUCCI)」が「ダイエット プラダ」をファッションショーに招き、公式インスタをテイクオーバー、つまり彼女に委ねてコレクションの情報発信に取り組みました。「ダイエット プラダ」が「グッチ」に招かれるという時点で味わい深いのですが、加えて、ハッキリ言えば“ポッと出”の「ダイエット プラダ」に公式インスタを任せる「グッチ」ってスゴい!モードとストリートの垣根を超越するアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)らしいインフルエンサー選びです。
そんな「ダイエット プラダ」が最近、「ロエベ(LOEWE)」のジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)に噛み付きました。きゃ〜、怖い!
きっかけは、「ロエベ」が来年4月、ミラノの国際家具見本市ミラノサローネで、ブランケットやタペストリー、トートバッグなどの展示を行い、多様なクラフトを披露すると発表したことでした。現在六本木で受賞作品を展示中の「ロエベ クラフト プライズ(LOEWE CRAFT PRIZE)」に代表されるよう、クリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は世界の職人技が大好物。ミラノサローネでもヨーロッパやアジア、アフリカ、そして南米の職人技を生かしたテキスタイルで作った、さまざまなオブジェを発表するというのです。
世界のクラフツマンシップをリスペクトし、さらに利益は伝統的な手仕事や女性教育の支援に充てるというプロジェクト。“噛み付く”余地は無さそうですが、ここに「ダイエット プラダ」は、戦いを挑みます。
彼女は「エクアドルの職人も支援すべきよ!」と主張し、さらにはインスタのストーリーに同様の主張をするニューヨーク在住のファッション・エディターのコメントをアップしたのです。
慌てて(いや、慌てなくても良いのですが)、そのエディターのアカウントにアクセスし、プロフィール欄のリンクをクリックしてみます。すると彼女は、「ロエベ」が18年春夏シーズンに発表したニットが、エクアドルの伝統的なモチーフを無断で拝借したものだと訴えています。
確かに、ニットのモチーフは、アンデス特有の民族衣装の女性をモチーフにしているように見えます。でもエディターが怒るほど「完全にパクってる」とは言い難いし、そもそも、これはある種のリスペクトなのでは……?そう思うのは、島国ゆえさまざまな人種、国籍の人たちと暮らす経験の少ない日本人の考え方でしょうか?いずれにせよ、NYのエディターは怒っているし、今となっては影響力絶大のインフルエンサー「ダイエット プラダ」も彼女に賛同しています。さぁ、ジョナサン、大ピンチ!
と思ったら、ジョナサン、エディターのコメントに「心配しないで。エクアドルで作ったブランケットとトートバッグもあるよ。もっと聞きたいことがあったら、カスタマーサービスに連絡して。ジョナサン。キスキス」とリプライしたのです!この行動に、「ダイエット プラダ」は拍手喝采。「ジョナサン、素敵。透明性のある対応を称賛するわ」とのコメントを発しました。
一連のやりとりを見て、時代は、確実に進化していることを感じました。「ダイエット プラダ」のような人材が現れて影響力を持ち始めていること、今世界には本当に多様な価値観が共存していること、SNSを使えば本当にデザイナーと直接交流ができること、一方でデザイナーは今、本当にさまざまなことに思いを馳せなければならないこと、などなどです。
個人的には最近、新SNSの「サラハ(SARAHAH)」を始めて、当初は正直、心ない匿名投稿に傷付きました(笑)。でも、それもまた一つの意見。そう思う人がいることを常に意識しながら、これからも新しいツールを楽しみながら、自分らしく仕事をして、ファッションを楽しもうと思っている次第です。それにしても「ダイエット プラダ」、実に恐ろしい!一体どうやって、このクリソツな写真を見つけてくるのでしょうか?