ファッション
2000号記念連載

23歳が見る10年前から憧れていたファッションの世界

 「WWDジャパン」2000号が11月6日に発売された。1979年の創刊から現在に至るまで、39年分のファッションニュース、時代を象徴するコレクションなど過去を振り返りつつ、現代のデザイナーや経営者たちのインタビューを掲載し、ファッションの未来を探る特大版だ。そこで「WWD JAPAN.com」では2000号の制作に携わったスタッフのコラムを不定期連載としてお届け。この号の編集を通して未来を見つめた、老(?)若男女幅広いスタッフたちの気付きや意見に、くみ取っていただける何かがあればさいわいだ。

 170ページという前例のない大ボリュームのタブロイド紙のなかで、私たち新卒1、2年目は「WWDジャパン」が創刊された1979年から現在に至るまでの39年間のファッション業界のニュースを振り返ってきました。私が担当した2000年代と10年代は私たちが実際に体験してきた時代です。まさか、自分自身がファッションの世界に興味を持つきっかけとなったニュースを編集するとは、ファッションに目覚めたおよそ10年前の私には想像もしなかったことです。

 10年にアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)が自死を選んだというニュースを読み返し、テレビ番組でアレキサンダー・マックイーンの追悼式典が放送されたことと、海外のファッションデザイナーの死が遥かかなたの島国でこんなに大きく取り上げられていることに、当時の何も知らない私は衝撃を受けました。それから彼の生前の作品群に心を奪われ、ファッション雑誌を読みあさるようになったことを思い出しました。07年のエディ・スリマン(Hedi Slimane)が「ディオール オム(DIOR HOMME)」と決別するというニュースでは、「ディオール オム」の雰囲気を感じさせる東京のデザイナーズブランドに身を包み、黒づくめで田舎町を闊歩していた高校時代を懐かしみました。

 そういった懐かしい思い出に浸りつつ、ファッションビジネスを振り返りました。そんな中で00年代以降は、時代を象徴するSNS、EC、インフルエンサーやファッションブロガーなどデジタルに関連するワードが頻出します。インフルエンサーという言葉が出てくるようになったのはほんの数年前で、その浸透具合にデジタル時代の時の流れの速さを実感しました。

 さらには、ショー直後に商品を買える“シーナウバイナウ(SEE NOW, BUY NOW)”システムも、ショーのライブ配信やECを介した即時購入が可能だからこそ導入された新たなシステムです。この新たなシステムやプレコレクションなど、春夏・秋冬以外のコレクションの導入によってデザイナーやブランドが疲弊してしまわないように願うばかりです。SNSやECの活用は今のファッションビジネスに必要不可欠かもしれません。そして、それらがファッション業界のサイクルを加速度的に速めているというのは紛れもない事実です。この流れに乗ることができない類まれなセンスを持ったデザイナーやブランドが淘汰されてしまうとしたら悲しいことだと思う反面、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)は「キャシュフローと生産、それらがうまくいけばファッションは楽しい」と語っています。今、クリエイティブな世界で最も成功を収めている彼の言葉に、ファッションビジネスにおけるクリエイティビティは事業や企業の在り方をも含まれているのだということを学んだ気がします。

 そして、00年代以降の「WWDジャパン」の頻出ワード“EC”の代表格といえば「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」です。「ゾゾタウン」がつい先日発表した着用することで採寸し、適切な服のサイズをサジェストしてくれる“ZOZOSUIT”は、サイズを理由にECでの購入を断念していた人、最適なサイズが分からず洋服を買い控えていた人にECでの購入を促す大きな一手になり得るかもしれません。ファッションのマーケット規模自体が縮小している今、こうしたイノベーションはファッションビジネスの未来に大きな影響を及ぼしそうです。

 雑誌や書籍などの紙媒体が好きで出版社に就職した私は、ファッション業界にデジタルの波が押し寄せたことによる、相次ぐファッション誌の休刊、デジタル化による業界の疲弊や同質化するインフルエンサー・マーケティングなど、デジタル化の負の側面にばかり目を向けていたような気がします。しかし、ファッションは常にその時代と共にあり、日々変わっていくものだとファッションの歴史を振り返ることで実感しました。そして、“今”に寄り添うことがファッションがクリエイティブであり続けるために重要なことだと感じました。

 私たちが大好きなファッションが“オワコン”だなんて言われないために、ファッション業界の未来に自分の立場から貢献したいとあらためて思いました。私と同様に、いや私以上にファッションを愛してやまなかった先人が作り上げた39年分の記事をまとめた「WWDジャパン」2000号にぜひ目を通してみてください。


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