アドビシステムズ(ADOBE SYSTEMS)によれば、27日の「サイバーマンデー」でのオンライン消費額は16年の56億ドル(約6216億円)から16.8%増の65億9000万ドル(約7314億円)で、約10億ドル(約1110億円)近く増加した。
そのうちモバイル端末からの消費額は初めて20億ドル(約2220億円)を突破した。スマートフォンはECアクセス数の37.6%、売上高の21.3%を占め、一方、エンターテインメントやゲームに特化しているイメージのタブレット端末は、それでもECアクセス数の8.2%、売上高の9.1%を占めた。なお、アドビの調査対象となったのは米トップ100のオンラインリテーラーの取り引きの80%だった。
全米小売業連盟(National Retail Federation以下、NRF)は、「サンクスギビング」から「サイバーマンデー」の間に、予測の1億6400万人を大きく上回り、1億7400万人以上のアメリカ人が店舗およびオンラインで買い物をしたと推定している。
また、NRFとプロスパー・インサイツ&アナリティクス(PROSPER INSIGHTS & ANALYTICS)によれば、5日間の消費者1人あたりの平均消費額は335.47ドルで(約3万7237円)、そのうちの70%にあたる250.78ドル(約2万7836円)がギフトやプレゼントだった。最も平均消費額が多かった世代は25歳から34歳のミレニアル世代で、1人あたり419.52ドル(約4万6566円)だった。
EC市場の全体の追い風を受け、最大手のアマゾン(AMAZON)が好調だったとは当然予想できるが、問題はその数字がどのくらいだったかだ。アマゾンは29日の朝の発表で、「サイバーマンデー」の注文数は7月の「プライムデー」を超え、1年で最大のショッピングデーになったことを宣言した。また、アプリからの注文数は前年比50%増で、AIを搭載したスマートスピーカー“Amazon Echo Dot”がベストセラー商品だった。
ジェフ・ウィルク(Jeff Wilke)=アマゾン ワールドワイド コンシューマー部門最高経営責任者(CEO)は、「アマゾンユーザーは『ターキーファイブ』(23日の「サンクスギビング」から27日の「サイバーマンデー」までの5日間のこと)の間、玩具からファッション、電子機器、アマゾンのデバイスまで、何億ものあらゆる商品を記録的なレベルで消費した。中小ビジネスだけでも約1億4000万件の商品注文があった」と話した。
GBHインサイツ(GBH INSIGHTS)が27日発表したところによれば、2017年ホリデーシーズンのオンライン売上高の45〜50%はアマゾンが占めているという。この好調を受けてアマゾンの株価は上昇し、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)創業者兼CEOの純資産を一時1000億ドル(11兆1000億円)以上に押し上げた。
同社のダニエル・アイブス(Daniel Ives)は、アマゾンの強みはそのプライム会員制度にあるとして「プライム会員制度はベゾス帝国のいわば“金のなる木”だ。われわれの推定ではプライム会員は約8500万人としていたが、前年比40%の率で増え続けている。しかもプライム会員のホリデーシーズンの消費額は平均20〜25%増と予測している。アマゾンが徹底して囲い込んだプライム会員という強固なビジネス基盤は、『サイバーマンデー』の激しい価格競争の中でウォルマート(WALMART)よりもはるかに安い価格と豊富な在庫量を実現した」と説明する。
だが、SNSにおいてはアマゾンの一人勝ちではなかったようだ。データサイエンスとマーケティングに特化したIT企業、4Cインサイツ(4C INSIGHTS)はフェイスブック、インスタグラム、リンクトイン、ピンタレスト、ツイッター、スナップチャットのキートレンドとパフォーマンス指標を元に、小売り各社のSNSのエンゲージメント(フォロワーによる好意的反応)を独自調査。結果は、メイシーズ(MACY’S)のエンゲージメント数が56万687、アマゾンは15万9091で、2年連続でメイシーズがアマゾンを上回るという結果になった。ターゲット(TARGET)は10万9548、ティファニー(TIFFANY)は5万6853だった。
幸先のよいスタートを切ったクリスマス商戦だが、各社が勝利を確信するにはまだ早い。「ターキーファイブ」が好調だったからといってクリスマス商戦全体が好調になるとは限らないことを、小売り各社はこれまでの経験から学んでいるはずだ。政治、自然災害、テロ行為のような予期せぬ事件によって消費にストップがかかる可能性は大いにある。クリスマス商戦はまだ始まったばかりだ。