「WWDジャパン」2000号が11月6日に発売された。1979年の創刊から現在に至るまで、39年分のファッションニュース、時代を象徴するコレクションなど過去を振り返りつつ、現代のデザイナーや経営者たちのインタビューを掲載し、ファッションの未来を探る特大版だ。そこで「WWD JAPAN.com」では2000号の制作に携わったスタッフのコラムを不定期連載としてお届け。この号の編集を通して未来を見つめた、老(?)若男女幅広いスタッフたちの気付きや意見に、くみ取っていただける何かがあればさいわいだ。
11月6日に発売した「WWDジャパン」2000号では、1979年の創刊から39年間に及ぶファッションにまつわるニュースやコレクションを振り返るのと同時に、2000号を記念したスペシャル対談やインタビューも掲載しています。その中で森英恵さんと中里唯馬さんとのデザイナー対談を担当しました。
森さんと中里さんのツーショット写真は、対談のあとに撮影したものです。中里さんが用意していたオリジナルのブレスレットをプレゼントした時のもので、森さんのうれしそうな表情が印象的だったので記念に撮影させていただきました。立体的なフォームがまるで今から飛び立つ蝶のように見えます。蝶は森さんのデザインを代表するモチーフです。森さんに対する中里さんの敬意と心遣いを感じました。
今回の2000号でどんな対談をしようかと考えていた時、日本を代表するデザイナーに登場していただきたいと思っていました。こんな機会でなければお願いできない方として、1977年にパリ・オートクチュール組合からアジア人として初めて会員として認められ、2004年までパリ・オートクチュール・コレクションを発表してこられた森英恵さんがまず浮かびました。
対談相手としてすぐに思い浮かんだのは、中里唯馬さんでした。16年7月に日本人として森さん以来、史上2人目のパリ・オートクチュール・ファッション・ウィーク公式ゲストデザイナーとしてコレクションを発表し、以降も毎シーズン発表しているからです。同じオートクチュールという舞台に立ったことのある2人によるトークは、とても内容の濃いものでした。何より1965年にニューヨークで初めて海外コレクションを発表し、70年代から2004年まで、パリでオートクチュールのショーを発表し続けた森さんの当時の話は貴重です。
実際にお会いした森さんは、今年91歳を迎えられたとは全く思えない、背筋の伸びた凛としたお姿で、思わずこちらの背筋も伸びました。今でも週に2回ほどオフィスに出向いて仕事をなさっているとのことでした。森さんが若かりし頃は、結婚した女性が、子育てもしながら第一線で働くのはとても難しかった時代ですから、それを実践してきたエネルギーや努力には計り知れないものがあります。「日本で映画のコスチュームを数多く手掛けていたから国内では成功していたけれど『日本には素晴らしい伝統と美意識がある』ということを世界に知らしめたいと、若かったから大きなことを考えたのかもしれない」とおっしゃっていたのが印象的でした。
中里さんは09年に自身のレーベルを立ち上げ、「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」のデザイナーとして活躍しています。先日、第35回「毎日ファッション大賞」で新人賞・資生堂奨励賞を受賞したばかりです。進化する技術を用いて人の体にフィットする一点モノの服作りを追求していて、未来を見据えた姿勢にはとても夢があります。この新たな服作りに森さんも興味津々でした。そして新しい服作りのステージが始まっているのだと実感しました。ぜひ皆さんにもお読みいただきたいと思います。