2017年のファッションECを考える上で、“物流問題”は外せないだろう。EC市場の拡大に加えて当日配送をはじめとする物流サービスの拡充によって、物流会社への負荷は限界に達したことで、例えばアマゾンジャパンの配送を担っていたヤマト運輸は契約の一部を取りやめ、当日配送からの撤退や時間指定の見直しを実施した。ヤマト運輸と提携してきた「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」も配送時間を変更するなど、その影響はファッションEC業界にも及んだ。
これら物流問題を解決する一つの手段として、以前の記事では人工知能(AI)を紹介した。AIを用いて全在庫をデータ管理し、最大限効率のいい在庫の使い方・発送法を割り出すことで負担を最小化するというやり方だ。例えば、「ライトオン(RIGHT ON)」や「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」などの在庫管理を行うアッカ・インターナショナル(以下、アッカ)は、AI在庫管理とロボット配送を活用し、提携先を増やしてきた。アッカは11月、大和ハウス工業に買収されたことを発表した。
その後も物流問題を緩和するさまざまなサービスが出てきた。ヤマト運輸は11月、再配達受付などを注文したECサイト上で可能にするAPI連携サービスを発表。ファーストパートナーにファッションレンタルのエアークローゼットを指名した。また、アトレ大森店ではECの購入アイテムを試着できるスペースを4日にオープンしたばかり。常駐の専門スタッフを置き、試着ができないECにおいて返品・再配達を減らす目的だ。他にも、昨年は寺田倉庫がクラウド上で自分専用の宅配ロッカーを管理する「ミニクラロッカー」を発表。ネット登録をすれば、複数サイトで注文した商品を一時保管してくれるため、自分のタイミングに合わせて一括で受け取りができる。前者は再配達の利便性をあげること、後者は再配達自体をなくすことを目的としている。アパレル関係でいえば、今年、無印良品やナイキなどがネット商品のコンビニ受け取りを開始。こちらも再配達をなくすサービスとして注目を集めた。
しかし、ファッションEC「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するスタートトゥデイが10月に実施した“送料自由”という奇想天外なサービスによって、ユーザーのECに対する考え方が明らかになった。ユーザーが送料を自由に設定できる同サービスだが、サービス導入後23日間で0円を選択したユーザーは43%、平均送料は約96円だった。同社は11月から送料を一律200円とした。
利便性を求める消費者が「できるだけ送料を払いたくない」と考えるのは不思議ではない。しかし、「送料がかからないのが当然だ」と考えることには少々問題がある。企業としても、AIの導入や配送システムの変更によって企業側の作業効率をアップできたところで、消費者との意識に乖離があっては、サービスは長続きしないだろう。極論を言えば、例えば、即日配送や再配達など運送における付加価値にはそれだけのコストを乗せてもいいと思う。その価値を消費者が理解できるかどうか、その啓蒙こそが企業に求められる次の課題なのかもしれない。