インスタグラムの若年層ユーザーがあまり「いいね」を押さなくなったのでは、という声を同世代からよく聞きます。以前も紹介しましたが、「ストーリー機能」などの登場によって投稿のハードルが下がり、作り込んだ世界観の“フォトジェニック”な写真よりも、親近感のあるリアルな投稿に人気が集まっているといいます。そんな中で、投稿への共感を示す「いいね」が減っているというのは、どういう理由からでしょうか。
そもそも、インスタグラムが日本で流行したのはまだまだここ数年の話。インスタグラマーと呼ばれる、フォロワーを多く持つ若年層に人気のユーザーが急増しました。彼らの投稿に対する共感が減ったことはもちろん一因でしょう。
もっと大きな背景に、インスタグラム機能の複雑化があると思います。インスタグラムは今年に入ってから24時間で消える動画機能「インスタストーリー」や動画配信機能「インスタライブ」、保存のための「クリップ機能」など、かなりの勢いで機能を拡充しています。特にここ数カ月の間にローンチされた「クリップ機能」と「コレクション機能」は画像を保存できる機能で、これまで保存機能として「いいね」を押していたユーザーは「いいね」を押さなくなりました。加えて、「ストーリー機能」や「インスタライブ機能」が若年層の間でムーブメントになり、“SNS=動画”という構図が出てきています。そうなると、「画像を保存する」という考え自体がなくなってしまうのかもしれません。先日、ついに「ストーリー機能」の保存機能も追加されましたので、ストーリー動画の保存も簡単にできるようになりましたね。
また、ユーザーはおそらくここまで意識していないとは思いますが、インスタグラムの広告ビジネスが潜在的に影響しているのではないかと思います。インスタグラムはおそらくユーザーの「いいね」やフォローを基準に嗜好性を判断し、ユーザーごとの広告を出しています。つまり、「いいね」によっておすすめに出る画像が変わったり、表示される広告が変わったりするのです。デジタル広告がある種“嫌われ者”になってしまった現代において、自分に合わない広告表示を減らす目的で、知らず知らずのうちに「いいね」を押さなくなったユーザーもいるのではないでしょうか。
以上のような理由を考えると、「若年層が『いいね』を押さなくなった」と言われても何ら不自然はありません。インスタグラムを活用して若年層への訴求を考えるファッション企業は多いと思います。日々繰り返される機能のアップデートに加えて、ユーザーのトレンドの移り変わりは、われわれが考えている以上に速いということを意識しなければいけないのだ、とあらためて考える機会となりました。