ここ数年、アパレル業界の新興勢力といえば消費者同士が売買を行うフリマなどのシェアリング・エコノミーと言われてきたが、新たなトレンドとして“質屋ビジネス”が増えてきた。フリマアプリ大手「メルカリ(MERCARI)」は11月末、即時買取サービス“メルカリNOW”をローンチした。スマートフォンで出品したい商品を入力・撮影するだけで査定額を表示する機能で、メルカリ側が査定・買取を行うというもの。買い取った商品はメルカリ子会社のソウゾウが「メルカリ」内で代理販売を行う。
ヤフーも11月に古本事業のブックオフコーポレーション、ネット型リユース事業を手掛けるマーケットエンタープライズの2社と提携し、買取サービス「カウマエニーク」を開始した。ヤフーが運営するオークションサービス「ヤフオク!」での買取を強化するため、店頭買取と出張買取という新たな選択肢を提供する。
モデルケースとなったのは、6月にローンチされた質屋アプリ「CASH」だろう。自社EC支援サービスのSTORES.jpを運営するブラケット創業者の光本勇介・CEOが手がけるサービスで、ローンチ初日にアクセス集中を理由にサービスを停止。2カ月の調整期間をおいて復活した。10月にはDMM.comに70億円で買収されたことからも、同サービスへの期待の高さがうかがえる。
「CASH」の件からもわかる通り、“いらないものを売りたい”というニーズは非常に高い。“メルカリNOW”は公開後数十分でサイトがダウンしたし、サービス停止を余儀なくされた「CASH」も初日流通高が3.5億円を超えたという。しかも、買い取った商品を販売する「ゾゾユーズド(ZOZOUSED)」などの中古品ビジネスが慢性的な在庫不足に陥っているというから、買い取った商品の吐き出し口にも困らないだろう。間に買取業者が入っていることで、フリマのような当事者間の取引によるトラブルも起きない。
シェアリング・エコノミーの進化形として、“売りたい”と“買いたい”を仲介する次世代型の質屋ビジネスは間違いなく伸びるだろう。もともと質屋ビジネスを得意としてきたコメ兵も11月、そのノウハウを生かした鑑定付きのフリマ事業を立ち上げたが、これも同じ構造だ。ただ、ファッション業界には、かねてから二次流通に対する敵対的な固定観念があるのも事実。海外ではラグジュアリーに特化したリセールサイト「ザ・リアルリアル(THE REAL REAL)」がステラ・マッカートニー(Stella McCartney)と公式にタッグを組むなど、少しずつ一次流通と二次流通の融和が進んでいる。自社商材がコントロールの利かないところで売られているわけだから、当然といえば当然だが、こういった新興ビジネスとどのように付き合っていくのか、企業としてのスタンスを考えるべきタイミングなのかもしれない。