世界No.1の衣料品チェーン、インディテックス(INDITEX)のアマンシオ・オルテガ(Amancio Ortega)創業者がファッションビジネスから引退することが分かった。オルテガ氏がインディテックスと53の関連会社の役職からすべて退任する旨を記した商業登記簿を13日にスペイン法務省が告示したもの。
1936年にスペイン・レオン県で生まれたオルテガ氏は、今年3月で82歳を迎えた。13歳でシャツ工房の丁稚(でっち)として働き始め、63年に縫製師として働いていた元妻のロザリオ・メラ(Rosalia Mera)とアパレルメーカーとしてインディテックスを創業。75年に「ザラ(ZARA)」をスタート。顧客のニーズをそのまま商品企画に生かすというという高速企画・生産力と、素材や縫製など品質へのこだわりが強く、百貨店級の品物をその半額で販売することで高い価格競争力を発揮し、支持を受けた。その後、「ベルシュカ(BERSHKA)」「ストラディバリウス(STRADIVARIUS)」「マッシモ・デュッティ(MASSIMO DUTTI)」など傘下のブランドを増やすと同時に、グローバル展開を本格化した。
最短2~3週間という短サイクルの生産スケジュールと、スペイン本国から48時間以内に、週に2度デリバリーを行うという最強のロジスティクスとで、ファストファッションのビジネスモデルを構築。現在、世界88カ国以上で7000店舗超を展開。売上高は233億1100万ユーロ(1ユーロ=130円換算で約3兆300億円)、営業利益40億2100万ユーロ(約5227億円)、営業利益率は17.2%と超高収益企業に育て上げた(2017年1月期)。
11年に75歳でパブロ・イスラ(Pablo Isla)CEOに社長職を引き継いでからも、毎日オフィスに通い、社員と一緒に社員食堂でランチを食べるなど、勤勉さと親密さの大切さをトップ自ら体現していたという。ファッションビジネスで最も成功した人物の1人として知られているが、ホテルや不動産事業も手掛けており、今年3月に「フォーブス(FORBES)」が発表した「世界長者番付2017」では、マイクロソフトのビル・ゲイツ(Bill Gates)、投資家のウォーレン・バフェット(Warren Buffet)、アマゾンのジェフ・ベゾス(Jeffrey Bezos)に続く世界第4位にランクインしている。