寒い冬は暖かなニットに包まれてぬくぬくと過ごしたくなるもの。毎年いろんなブランドが新作ニットを発表しますが、オススメはファクトリーブランドのニットです。ファクトリーブランドとはその名の通り、工場が独自に展開するブランドのこと。それぞれの工場が強みを生かして作るため特色が分かりやすく、ウールなどの天然素材をたっぷり使いつつ、デザインや製法にこだわっているのがポイント。いずれも山形県や新潟県の産地で丁寧に作られています。直営店がないブランドが多いのですが、自社ECやセレクトショップでじわじわとファンを広げつつあります。
山形県の老舗ニットメーカー、米富繊維が2010年に立ち上げた「コーヘン(COOHEM)」の特徴は、ニットツイードと呼ばれる独自のテキスタイルを用いた意匠性の高いデザイン。ファンシーヤーンをたっぷり編み込み、色柄もカラフルなアイテムに中毒になるファンも多いようです。モッズコートやダウンベストをニットで作るなど、いつも新しい試みに挑戦しています。ブランドを立ち上げてから若い社員も増え、彼らの柔軟な発想をベテランの職人が形にしていくという良い循環が生まれているそうです。キャップやスニーカー、クラッチバッグなどのアクセサリーも展開しており、特に名刺入れは業界人でも何人か持っている方に遭遇しました。17年にスタートしたメンズは、CMなどメディアでの露出もあり問い合わせが増えているそう。デザインがとても凝っているので、主役ニットを探している人は要チェックです。
新潟県のニットメーカー、梅田ニットが12年春夏シーズンから展開しているのが「ラッピンノット(WRAPINKNOT)」です。他素材との組み合わせを強みに、一見ニットには見えないデザイン性の高いアイテムを提案しています。セーターだけでなく、アウターやボトムスなどにも力を入れていて、特にウエストがニット仕様のボトムスは毎シーズン人気とのこと。この秋冬好評だというニットアウターは私も持っていますが、丈の長さと色合いがどんな服にも合い、薄手なのにウール100%で暖かく、しかもチクチクしないので重宝しています。ニット=カジュアルという印象がありますが、「ラッピンノット」のアイテムはコーディネートの印象を上品に仕上げてくれます。今後は得意のハイゲージ(編み目が密なニットのこと)にも力を入れ、よりラグジュアリーな素材使いも追求していくとのこと。“これもニットなの!?”とサプライズ感のあるアイテムが今まで以上に増えそうです。
13年に誕生したニットウエアブランド「バトナー(BATONER)」は、1951年創業の奥山メリヤスが立ち上げました。奥山メリヤスと同じ山形県河江市にある紡績工場で作られた糸を使い、柔らかな風合いのセーターを生み出しています。インスタグラムで人気のノルディックセーター(#バトナーで検索してみてください)をはじめ、シンプルながらも存在感があり、どこか懐かしさの漂うデザインが特徴です。試行錯誤を重ねて生み出された端正な編み目はとても清潔感があり、特にリブ目が整ったあぜ編みのセーターは人気商品だそう。ポップアップストアで職人による実演販売を行ったり、公式サイトではセーターの原料から製法、手入れ方法までが解説されていたりと、丁寧なモノ作りを発信しています。17-18年秋冬からは自社ECサイトをオープンし、ゆくゆくは直営店の展開も考えているそうで、ファンの輪が広がっていきそうです。