ファッション

クリスチャン・ルブタンが語る現代の女性らしさ

 クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)が生み出すレッドソールの官能的な靴は、世界中の女性をとりこにしてやまない。なぜ、女性を魅了し続けることができるのか。パリ・ファッション・ウイーク中に行ったインタビューで、クリスチャンに現代における“女性らしさ”について聞いた。

“女性らしさの定義を変えたのは80年代の女性ミュージシャン”

 
WWDジャパン(以下、WWD):あなたの考える現代の“女性らしさ”とは?

ルブタン:私は“女性らしさ”を自由と結び付けて考えています。フランスには女性について書かれた「Le Sexe Faible(弱き性)」という本がありますが、私はずっと女性を“弱い性”と呼ぶのは冗談だと思ってきました。だって今、か弱い女性はあまりいませんから。体力的な面ではか弱いかもしれない。でもそれ以外で男女の間に強さの差は存在しません。ですからか弱い性ではないのです。もし、か弱い性というものが存在するとしても、それは女性のことではないでしょう。

WWD:“女性らしさ”の定義も変わってきている。

ルブタン:1960年代に生まれた私は70年代後半にティーンエイジャーになったわけですが、当時のフランスではこの“女性らしさ”という考えは男性を喜ばせるためのものでした。少なくとも、男性はそう思っていたでしょう。ですが、私はずっとこの考えに違和感を持っていました。でも70年代当時、女性が伝統的な“女性らしさ”を追求し、自らの手入れを行うーーすなわち身なりを美しく整え、髪を清潔にし、化粧をすれば、彼女は「か弱い人間である」ということになったのです。

WWD:どのように変わってきたと考える?

ルブタン: 80年代に入り、女性ミュージシャンが活躍するようになって、金髪でもハイヒールを履いていても、メイクをしていても愚かではない、脳みそがないわけではない、ということが明らかになった。70年代には異質と思われたものが、定着してきてやがて意識もしなくなった。ですから現代においては、“女性らしさ”はどこにでも行けるということです。いかようにも捉えることができる。

私は、自分がやりたいことに対して、「“女性らしさ”が障害になる」という人が少ないことを願っています。仕事をしたければ、自分を表現したければ、“女性らしさ”と共にすればいいのです。これはミュージシャンたちの手柄だと思っています。30年前、主要なミュージシャンは男性でした。でも今、最も影響力のあるミュージシャンは女性たちです。その中にはビヨンセ(Beyonce)もマドンナ(Madonna)もリアーナ(Rihanna)もいます。彼女たちは同じレベルで競っています。ですが、女性シンガーたちのレベルにいる男性シンガーは誰でしょうか。ビヨンセの言うように、世界を動かしているのは誰でしょうか(笑)。そもそも男性と女性は戦うべきではないと思います。

“私の靴は女性であることを楽しめる人のための靴”

WWD:どんな女性をイメージして靴を作っている?

ルブタン:私の靴は女性であることに満足していて、それを楽しめる人のためにあります。つまり靴という機能を満たすだけでなく、“女性であることの喜び”そのものが感じられる靴を提供したいと考えます。幸いなことに私には女性であることを謳歌している姉(妹)がいます。彼女は女性であることを楽しみ、とても女性らしい。逆に女性らしくせずに楽しむ人たちもいますし、現代では全てが可能ですよね。

ファッション業界でも女性はパンツやミニスカート、スニーカー、何を着ても履いても自由です。パンツを履いたからといって、男っぽいと思われることはありません。毎日スタイルを変えてもいいのです。一日の間に何度でも変えることだってできます。あなた次第です。こうしたことが、私が考える現代における女性らしさです。男性に比べて女性が弱いという先入観は全く誤りです。

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