美容師としてだけでなくDJとしても活躍するなど、業界の枠を超えて注目を集めるヘアサロン「ベチカ(vetica)」の内田聡一郎トップディレクター。2018年3月には自身のヘアサロン「レコ(LECO)」をオープンする予定だ。そんな新しい挑戦を前に、“これからの美容師に必要なこと”を語ってもらった。ヘアサロン業界の競争が激しくなってきている中、業界のトップランナーはどう考えているのか。ぜひ、参考にしてほしい。
WWDビューティ(以下、WWD):ヘアサロン業界の競争も激しくなり、生き残るのが厳しい時代になってきている。これからの美容師に必要だと思うことは?
内田聡一郎(以下、内田):2つあって、1つは“受け入れる柔軟さ”。もう1つは“行動を起こすスピード”。この2つがこれからの美容師には必要だと思いますね。
WWD:“受け入れる”というのは分かっていても、なかなか実践するのは難しいと思うが。
内田:ある程度キャリアを積むと、変なプライドが出てきて、人の話を素直に受け入れられなくなってきてしまう。2018年3月に独立するにあたり、今は年齢に関係なく自分が話を聞きたい人に会うようにしているのですが、本当に今まで関わってこなかったような美容師さんにもたくさん会うようになり、そこで聞く意見はこれまでの自分の価値観とは正反対だったりするんです。でもそこで、「自分と考えが違う」と決め付けてしまわずに、まずは一旦受け入れることが大事だなって実感しています。
WWD:行動するスピードも重要になっている?
内田:ヘア業界も速いスピードで変わっているので、そこに柔軟かつスピーディーに対応できるようにしないといけないです。これからは新しい価値観で新しいことを考えて、すぐに行動できる美容師が生き残っていくと思います。
WWD:確かに、新しいことをやっていかないと古い業界になってしまう。
内田:ヘア業界って技術職なので、まだまだ古い部分が残っていて、それはいい面もありつつ、技術以外の部分で働き方や集客方法などは時代に合わせて変えていった方がいいことも多いと感じますね。
WWD:内田さんは、クリエイティブなヘア作品を作っているが、“クリエイティブ”に関してはどう考えている?
内田:昔は、クリエイティブな作品を作ることが自分やサロンにとってのブランディングにつながっていたし、クリエイティブな作品を作り続けてきたからこそ今の自分があると思っています。でも、今だとそれが売り上げや知名度アップといった結果につながりにくいです。でも、“やらないよりやった方がいい”と思っています。コンセプトを決めて、それに合うヘアや衣装を考えるのに、やっぱりファッションのトレンドをいろいろと調べるので、そこから学べることは多くあります。僕の場合は単純にそういったクリエイティブなヘアを作るのが楽しいっていうのはありますけどね。ただ、「クリエイティブなヘア作品を作っているから偉い」っていうのは全然思っていなくて、別にやらなくてもいいと思っています。
WWD:これからの美容室の在り方については?
内田:個人ブランディング全盛ですが、サロンブランディングがまた重要になってきているなって思います。スタッフ個人が魅力的であることも重要ですが、それだけではなくサロンとしての魅力でお客さまを呼べるというのがこれからの生き残っていく美容室。ただ、サロンブランディングといっても以前のようにトップダウンではなく、スタッフ全員が意志を持ってブランドを作っていく、そんなイメージですね。