ファッション

業界初、ファッション インフルエンサー セレクションの新入社員が2017年を総括

 ジャーナルスタンダードやイエナ、エディフィスなどのセレクトショップの他、家具やインテリア、飲食事業を手がけるベイクルーズグループは2017年、ユニークな“ファッションインフルエンサー セレクション”という新卒採用枠を取り入れた。マーチャンダイザー(MD)やプレス、バイヤーなどの職種が対象で、入社後の早い段階で販売やモノ作りの現場、バイイングなどを経験するキャリアプログラム。将来30歳を前にして会社の中心となる人材を育成する英才教育を施す。昨年、たった1人だけ採用されたファッション インフルエンサーセレクションの新入社員に採用までの道のりを聞き、17年を総括してもらった。

WWDジャパン(以下、WWD):ファッションインフルエンサー セレクション採用で入社されましたが、2017年はどんな1年でしたか?

海保みちる(以下、海保):怒濤の1年でしたね。配属はジャーナル スタンダード(JOURNAL STANDARD)のウィメンズで4、5月を表参道店、6から8月末までルミネ横浜店で販売職を経験しました。現在はグループ会社のベイクルーズに出向し、生産管理部門に勤務しています。

WWD:それぞれの仕事に関わって何を感じましたか?

海保:販売は学生時代に経験しましたが、責任感が違います。客層や規模が異なる店舗でしたのでそれぞれにやりがいがありました。表参道店は路面の旗艦店、ブランドの世界観をいかに表現するかが重要。一方、ルミネ横浜店は大型で売り上げも全国トップクラス。あらゆる客層の方が来店するので、売り上げに対してはより貪欲に考えるようになりました。両店での環境はシビアでしたが大きなステップになったと感じています。また、洋服作りを体系的に学んでいないので、生産管理部門では実際に国内の工場を見学したり、モノ作りの現場を見ることで洋服の奥行きを学びました。多くの人が関係してコストが掛かっている様子を目の当たりにしたことで、今までよりも地に足の着いた考え方や判断ができ、今後MDとして働く際には大きな糧になると思います。

WWD:15ルックのスタイリングのスナップショットを提出する応募条件はとてもユニーク。どんなスタイリング写真を作ったんですか?

海保:「15体のスタイリングを作ってください」というオーダーだけでした。自分は写真を撮れないので、文化大学に通うアート寄りの世界観を好む友人に撮影を頼みました。2カ月間かけて制作したんですよ。

WWD:2カ月とは立派な作品ですね。

海保:毎日ずっと一緒にいました(笑)。彼女もアートのような作品を作りたいと話していましたので、撮影場所やコーディネートに彼女の視点も加えた写真になりました。

WWD:ポートフォリオのタイトルを“ユース(Youth)”にした理由は何ですか?

海保:タイトルは最後に付けました。制作を終えて、アイデアも実際の撮影も2人の全てを出し切ったので、若い、フレッシュな感覚を詰め込んだ1冊だなと思いストレートに“ユース”としました。

WWD:かなり作り込んでいる印象を受けます。制作過程を教えてください。

海保:もともと私は、たくさん洋服を買うよりも1着にお金をかけるタイプで、そのアイテムをどう着回すかを考えるのが好きなんです。なので、ジャケットやパンツなど軸になるアイテムを5つ選び、3パターンずつスタイリングを組んで、フェミニンやボーイッシュ、モードなどテーマごとに見え方が異なる15ルックを表現しました。ただ、自分が考えたコンセプトがややこしかったので、どうすればわかりやすく伝わるかを考え、見開きで全身のイメージとディテールカットを組み合わせて載せました。ディテールは袖をまくったり、アクセントを付けて。

WWD:編集者兼スタイリストみたいですね。ロケ場所にもこだわりがありそうですが。

海保:何度もロケハンをしました。渋谷の並木橋周辺と中目黒、代官山の裏路地をひたすら歩き回ったり。並木橋を渡った先にあるキング ジョージ(King George)というサンドイッチ店で友人が働いていて周辺に詳しかったので、雰囲気の良さそうな場所を聞いて実際に足を運びました。いろいろなビルの屋上もチェックしましたね。

WWD:この経験は今後何かの役に立ちそうですか?

海保:私は帰国子女なので、自分の考えを日本語で言語化するのがそれほど得意ではないんです。今回、自分の考えをモノとしてアウトプットしたことで、新しい伝え方の手段を発見したと思っています。特に販売ではスタイル提案の時に役立ちました。お客様は限られた予算で買い物をするので、着回しやどんな見せ方をしたいか、スタイルの提案を求めていらっしゃる方が多いですから、その点は役立ちました。

WWD:休日は何をして過ごしていますか?

海保:最近はジャズ喫茶で漫画を読むことにはまっています。もともと洋楽が好きで、他ジャンルの音楽もミュージカルも見に行きます。一番好きなのは兄の影響でヒップホップ。1990年代のスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)やドクター・ドレー(Dr. Dre)、ナズ(Nas)が好きです。今、ラッパーがファッションに深く関わっていますよね。ラグジュアリーブランドのコレクションもインスピレーション源としてアートや音楽が多いと感じます。カルチャーが洋服に落とし込まれているのは興味深いです。

WWD:将来ベイクルーズでどんな人間になりたいですか?

海保:今、ファッション業界に元気がないのでベイクルーズのメッセージを強く発信し、若い人たちにも共感してもらえるようになりたいですね。そのために自分はファッションに関する感性を常に磨かなければいけないと思っています。それがモノ作りにも影響するはずですので、ただ経験を積むのではなく、多角的にモノを見て、販売や生産管理で経験したことを今後に活かしていきたいです。

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