ラフ・シモンズ(Raf Simons)が約2年半ぶりに来日した。11月30日、パートナーシップ契約を結ぶザ・ウールマーク・カンパニー(THE WOOL MARK COMPANY以下、ウールマーク)の100%メリノウールを使用した限定の「I Love Tokyo」セーター(9万9000円)がドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA 以下、DSMG)で発売された。その日のパーティーにはデザイナーやスタイリスト、DSMG顧客、メディア関係者らが駆け付けた。ラフが会場に到着するとシャッター音が鳴り響き、ゲストは興奮。ラフは落ち着いた面持ちでサインや写真撮影に応じるなどファンとの交流を楽しんでいた。「WWDジャパン」はセーターに入れた“I♡東京”に込めた思いを聞いた。
WWD:ウールマークとのパートナーシップ契約を結んだ理由は?
ラフ・シモンズ(以下、ラフ):ウールマークは、ウールについての高い知識と、革新的な素材開発への関心、創造性への理解がある企業。でも一番の決め手になったのは、私自身ニットが大好きであること。ニットはブランドの中でも重要なアイテムで、ブランドを設立した1995年から必ず作り続けている。共感できるアーティストや企業とのコラボレーションは積極的に取り組みたいと思っているが、今回は協業というよりも、一緒に新しさを追求して、ユニークで特別な何かを持ち合うという感覚だ。
WWD:コラボレーション商品のデザインに“東京”を選んだのはなぜ?
ラフ:ニューヨークに拠点を移してから、ブランドが好調だ。2017-18年秋冬に発表したセーターは、この20年で一番の成功を収めたと実感していて、コレクションでは素直に"I Love NY"という気持ちをセーターに込めた。それを他の国でも発展させ、英語以外の言語でも表現した。
WWD:日本にどのような思いがあるのか?
ラフ:特に「ラフ・シモンズ」ブランドとしては、エモーショナルな結びつきがある。日本は、最初に僕のクリエーションを受け入れてくれた特別な場所だ。ブランドを始めた頃はビジネスの大半は日本市場が占めていた。今でも最も強力なマーケットの一つで、たくさんの取引先と顧客に支えられている。日本のファッション・コミュニティーに敬意を感じるし、私も日本から刺激を受け続けていて、美しい関係性が築けている。だからこそ、できる限り恩返しをしたい。
WWD:日本の顧客をどう分析している?
ラフ:革新的で挑戦することが好きで、服を通して自由に自己表現を楽しんでいる。スタイルもさまざまなジャンルに細分化され、モードやファストファッション、古着など取り入れていて表現が豊か。現在、ニューヨークで暮らしているが、ニューヨークも東京も生き生きしている。それは街を離れたときに実感する。他の国へ行くとファッションに物足りなさを感じてしまうことも多い。でも、数時間かけてニューヨーク郊外へ行くと、典型的なアメリカの田舎らしさがある。東京や大阪の都市部で見かけるスタイルも、地方へ行くと見えなくなってまうもの。それはそれで別の美しさがあるものでもある。
WWD:特に日本には「ラフ・シモンズ」のファンが多い。オシャレな若者も“憧れのブランド”として取り入れ、着こなしを楽しんでいる。ここ数年でブランドの変化を感じるか?
ラフ:特にこの数年は、今まで以上にブランドの成長を感じている。22年にわたり、ずっとやるべきことをやり続けてきた結果だが、ブランドを継続させることができたこと誇りに思う。
WWD:なぜ好調なのか?
ラフ:驚きでしかない。一言に好調といっても、売上高や評価、経歴なのかどこで判断するかにもよるだろう。私たちは常に他とは異なっているものを生み出すことを重視してきた。変わっていて、新しいと感じられるものを考え出す努力は惜しまない。いつもクリエイティブな人々と仕事をして、周りの人からの影響も大きい。しかし、ビジネスに向き合ってコマーシャルピースを作る責任がある。変化することを恐れている人は多いかもしれないが、私が考えるファッションとは、常に変わり続けていくものだ。