ファッション

パリでラグジュアリーブランドを扱うリセールサイトが勢いを増す訳

 パリでは、ビンテージアイテムが新たな位置を確保しつつある。昨年9月に開催した2018年春夏パリ・ファッション・ウイーク中には、世界中のジャーナリストやバイヤーがメルシー(Merci)に立ち寄ってヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)の期間限定のビンテージウエアに目を輝かせていた。「ヴェスティエール・コレクティブ」は09年にフランスで設立された、ラグジュアリーブランドの古着やグッズを専門に取り扱う委託ショッピングサイトで、専門家による真贋判定を強みに、現在全世界で600万人の会員が利用し、毎週約3万点もの商品が取り引きされている。その人気はサイトだけにとどまらず、17年10月には、パリを中心に4カ月間限定で実店舗をオープンしたほどだ。筆者は同サイトで、買い逃して後悔していた17年春夏の「ロエベ(LOEWE)」のハンモックバッグを3分の1の価格で手に入れた他、「セリーヌ(CELINE)」のドレスや「アクネ ストゥディオス(ACNE STUDIOS)」のトップスを出品すると全てが4日以内に売れた。

 ラグジュアリーブランドに特化したリセールサイト、「リシー・ドットコム」は、ショールームでの試着サービスを開始した。ウェブサイトのコンタクトからメールを送ってアポイントメントを取り、16区にある凱旋門近くのショールームで試着ができるという仕組みだ。洋服だけでなく、雑誌のバックナンバーやブランドカタログなどの掘り出し物もあり、日本への配送も可能。ビンテージアイテムの人気は世界中に広がっている。昨年のニューヨーク・ファッション・ウイーク中には、「リシー・ドットコム」がキュレーションしたポップアップコーナーをバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)で開催した。ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)は米リセールサイト「ザ・リアル・リアル(The RealReal)」と提携することを発表した。日本でも「メルカリ(MERCARI)」や「ゾゾユーズド(ZOZOUSED)」のように、この動きはますます広がりそうだ。

 何十年も昔のアイテムがあらためて評価をされる理由は何だろうか?「ヴェスティエール・コレクティブ」のビンテージ部門を統括するマリー・ブランシェ(Marie Blanchet)は「現在の単一的なファッションとそれを後押しするSNSの存在によって、人々は独創性を強く求めるようになった。消費者はマーケティングが作り上げたものではなく、ビンテージアイテムの持つ希少性に価値を見出し、それが新たな時代のムードを作り出す」と語った。ビンテージアイテムは“人とは違う”オリジナルなファッションを表現するのに最適ということだ。「メルシー」のチーフディレクター、ヴァレリー・ジェルビ(Valerie Gerbi)も「消費者はあらゆる要素をミックスする現在のファッションに対して、ビンテージアイテムのアレンジを楽しんでいる」と語った。昨年5月に「ヴェスティエール・コレクティブ」とのコラボレーションを発表したクロエ・セヴィニー(Chloe Sevigny)はコンデナスト(CONDE NAST)傘下の「Wマガジン(W MAGAZINE)」「Wマガジン(W MAGZINE)」のインタビューで「現在のファッションは全てが白く塗りつぶされたように同じに感じる。SNSや雑誌、広告から届く大量の情報やイメージの影響で、人も商品化されている気がする」と語ったうえで、ビンテージアイテムが注目されている背景について「人は、大量生産では得られない真実のストーリーを求めているのかもしれない」と時代に左右されないビンテージアイテムが持つ深みがオリジナリティを生むと考察した。

 また、ファッション産業は世界規模の二酸化炭素の排出量が2番めに多いうえ、大量のゴミ問題といった環境問題を抱えている。ステラはト「ザ・リアル・リアル」と業務提携時に「循環型経済への転換は、地球にとって必要不可欠なこと」と語るなど、多くのファッション関係者がリセールと環境との関連性について言及している。リユースの精神は、環境にも配慮し地球に優しく、現行品にはない素材やプリント、美しいカッティングでオリジナルのスタイルを作れもする。ビンテージアイテムの人気が広がることで、新たな消費の場をが生まれてファッション自体も活性化していくことだろう。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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