ファッション

写真家ヨシダナギに捧げる“黒い機能服” 「アグリス」発表

 鷺森アグリが手掛けるウィメンズブランド「アグリス(AGRIS)」は、2018年春夏で女性写真家のヨシダナギのために制作したコレクション“agris & Dear nagi yoshida”を発表した。これは、デザイナーの鷺森がクリエイターとのコミュニケーションを通してコレクションを作り上げる「Dear_______Project」の第1弾だ。

 主にアフリカの少数民族を被写体にシャッターを切るヨシダナギ。紀行バラエティー番組「クレイジージャーニー」(TBS)での彼女を追ったドキュメンタリーでは、その美貌と自然体なキャラクターに対し、厳しい環境の中でも果敢に撮影をこなすギャップが話題になった。ヨシダのトレードマークは黒い服で、東京でもアフリカでも「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」などのモードブランドを着こなしている。

 今季のコレクションは2部に分かれ、一つはヨシダに向けてデザインした機能性を加えた黒いウエアのコレクション。もう一つはヨシダの作品で、“世界一おしゃれな民族”といわれるエチオピアのスリ族を撮影した写真集「SURI COLLECTION」から着想し、“求愛(装飾)”と題した色鮮やかなコレクションだ。

 鷺森とヨシダの2人にコラボレーションの経緯や“黒い服”に対する思いなどを聞いた。

  
WWD:2人の出会いは?

鷺森アグリ(以下、鷺森):最初のきっかけは、私が好きな人とだけ仕事したいと思ったことから。それは苦手な人を排除するわけではなく、好きな人のために何かを作るという作業がとても楽しいと感じていたから。もともと、私自身がナギさんのファンで、16年にトークショーを行う際に、一緒に出ていただきたいとオファーをしたことからのご縁でした。

ヨシダナギ(以下、ヨシダ):その依頼をいただいた時は、ブランド名を存じ上げず、ルックを拝見した時も正直“私は着ないような服”と思っていました。しかし、実際にアグリさんとお会いしたら、どこか同じ匂いがする人で、私のオフの時の雰囲気に似ていると感じて(笑)。出演することを決めたんです。

WWD:なぜ“ヨシダさんのため”の服をコレクションとして制作したのか?

鷺森:ナギさんからの依頼があったのと、私も誰かに向けた服を作りたいと思っていたことからです。

ヨシダ:アグリさんが「アグリ サギモリ」時代(16年に「アグリ」に改称)に黒い服を中心に手掛けていたことを知って、その当時のコレクションが購入できないかと尋ねたんです。

鷺森:「アグリス」に改称してから黒を封印していて、“ここぞ”という時に使いたかった。今回がそのタイミングだと思ったんです。

WWD:それぞれ2人にとって“黒”はどんな色?

鷺森:私にとって黒は大切な色。22歳からブランドをスタートさせて、初めは業界の中で武装するために使っていたような気もします(笑)。黒の力を借りて、大人っぽくなりたいと思っていましたし、今でも普段着では黒を着ることが多いです。

ヨシダ:黒の服は、凛としていて、自立した女性像を思い浮かべます。着ることで見た目も気持ちもシュッと締まる気がしますし、黒を着ていると絶対ナンパされない(笑)。そのくらい、女性を強くしてくれる色だと思っています。

WWD:ヨシダさんはなぜ東京でもアフリカでも同じ服を着用するのか?

ヨシダ:アフリカ大陸の砂漠やジャングルでも、東京にいるときと同じ状態でいたいと思っています。海外へ行くからといって、普段の服装を変えようとは考えていません。

WWD:今回のコレクションはどのように制作したか?

鷺森:ナギさんが求める服への要素をヒアリングしながら、デザインしていきました。例えば、撥水加工を施したコートにはカメラのレンズやバッテリーを収納できるポケットを付けました。また、アフリカは寒暖差が激しく、昼は摂氏50~60度と猛暑にもかかわらず、夜は10度まで下がることもある。軽くかさばらず、持ち運びに便利で寒さから身を守れるものを目指しました。素材については、破れにくく、“ひっつき虫”が付かない素材、シワにならなくて、汗染みもつかない機能素材などこだわり、着る人をキレイに見せるデザイン性を追求しています。

ヨシダ:今まで探しても見つからなかったものばかり。かっこいい細身のシルエット、着脱のしやすさ、洗ってもすぐ乾く速乾性などが備わっていて、とても重宝します。お気に入りはコートとパンツ。一度、テストとして制作段階の一部コレクションを、パプアニューギニアでの撮影で着てきたんです。アフリカで着やすい服は、東京でも着やすいので、どこへでも着て行きたい服になっています。

鷺森:ナギさんにはテスト版を着用してもらって、改善点を見つけることができました。お披露目しているコレクションは修正を重ねています。

WWD:2人でアフリカへ行くと聞きました。

鷺森:やはり、実際に現地へ行ってみないと分からないこともあると思ってました。ナギさんに「よかったら一緒に」と言っていただけたので、作ったコレクションを着て2人でナミビアに行ってきます。

ヨシダ:普段テレビで訪れるような場所は、観光地ではないので、撮影の許可取りやビザの取得も大変なことがあります。ナミビアには、衛生面や治安を含めてアフリカ初心者でも楽しめるエリアがあり、そちらへアグリさんをご案内します。

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