「アンダーカバー(UNDERCOVER)」と「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.以下、ソロイスト)」の合同ランウエイショーが、イタリア・フィレンツェで開催中のピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMAGINE UOMO)のイベントとして11日に開催された。会場のレオポルダ駅には1本の長いランウエイが設置され、まずは「アンダーカバー」のショーで幕を開けた。
スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)が手がけた1968年の映画「2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)」からインスピレーションを得て、宇宙服のようなカラフルな色やハイテク素材を駆使し、未来的な要素を落とし込んだコレクションが登場した。「人間がコンピューターに支配される未来をイメージした」と高橋盾デザイナーが語るとおり、映画内に登場する人工知能を備えたコンピューター“HAL”のプリントや、“COMPUTER MALFUNCTION(コンピューターの故障)”の文字が刻まれたウエアを“ヒト”がまとうことで、現代に対して警笛を鳴らすかのようなストーリーを描いた。しかし「アンダーカバー」らしい快活なストリート感は健在。ポンチョやサコッシュなどのアウトドアアイテムを多用し、多彩なチェック使いでちょっぴりやんちゃなブリティッシュ要素を加えた。ラストには不穏な音楽とともに、宇宙服そのもののようなダウンジャケットをまとった5人が登場した。
しばらく暗転した後、反対側のランウエイから「ソロイスト」のルックが登場した。まるですべてさらけ出すのを拒むかのように顔をフードやマスクがモデルの顔を覆い、照明も暗い。象徴ともいえる黒のウエアは、その暗闇の空間で重厚な雰囲気をまとう。アイテム単品ではキャッチーなグレンチェックのジャケットやレザーマント、キルティングダウンのアウターなどは、難解なスタイリングによって見ている物に親しみを与えず、独自の世界観へと引き込む。そんな孤高のデザイナーらしい演出でショーは進む。後半は「アンダーカバー」と同じく、宇宙服のようなオレンジのウエアが登場した。宮下貴裕デザイナーが「洋服は常に進化している。だから僕は後ろを振り返らない」と語るように、「ソロイスト」が見据える未来を表現したのだろう。
フィナーレでは「アンダーカバー」は白いプリーツスカート、「ソロイスト」は黒いトップスとスキニーをまとったモデルたちが双方から交差し、初めて両ブランドが同じ舞台に立った。偶然か、演出か。2人のデザイナーがそれぞれ描いた対照的な未来が交わる合同ショーとなった。