1月12日の夕方、東京・港区にあるANAインターコンチネンタルホテル東京のボールルームは熱気に包まれていた。会場には、豊富な閣僚経験を持つ甘利明・元経済再生担当大臣を筆頭にした国会議員や、経済産業省など省庁の幹部、見本市運営会社のトップ、関連企業など1000人以上が詰めかけた。挨拶に立った、見本市業界団体の日本展示会協会(以下、日展協)のトップで日本最大手の見本市運営会社リード エグジビション ジャパンの石積忠夫・社長は、「タイミング的にはこれが最後。2兆円の損失につながる、見本市の開催危機を業界一丸になって乗り越えよう!」と檄を飛ばした。
東京都などが「東京ビッグサイト」を東京オリンピックのメディアセンターとして使用決定に端を発した、“2020年会場問題”がいよいよ大詰めを迎えている。当初東京都の決定により、「ビッグサイト」は開催前の準備期間も含め、20カ月間に渡り使用できなくなるとされた。日展協は、232本の見本市が中止に追い込まれ、出店社7万8000社の売上高2兆円が失われると猛反発。日展協の石積会長が先頭に立って反対運動を行ってきた。
日展協は署名サイトや意見広告に加え、政府与党の自民党の国会議員97人で組織する展示会産業議連を組織。このほど会長には、閣僚経験が豊富で、安倍首相にも近いとされる甘利元経済再生担当相が就任した。日展協は、東京ビッグサイトに隣接する防災公園にメディアセンターの建設を求めているが、その場合は建設の総工費が200億〜500億円とも言われる。自民党のある有力議員は「防災公園を使うとしたら複数の省庁との調整が必要で、それ以外にも多くのステークホルダーがいる。これまではそうした整理を進めてきた。安倍総理にも近く、経済産業大臣や労働大臣など複数の閣僚経験者である甘利氏が議連の会長に就任したことで、解決に大きく前身したといっていい」と明かす。
ファッション関連でも「ファッション ワールド東京」や「IFF-MAGIC」、コミケなどの多くの大型見本市が東京ビッグサイトで開催されており、他人事ではない。メディアセンターを新たに建設するならば1年以上の時間が必要で、見本市会場問題に残された時間はそう多くない。一体どうなるのか、予断を許さない状況が続いている。