ファッションEC「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を手掛けるスタートトゥデイが発表した採寸のための“ZOZOSUIT”が大きな話題になる一方で、「サイズが全てではないのでは?」という意見をよく聞く。もちろん詳細なサイズが分かるに越したことはないが、サイズが完璧にマッチしたところで、そのサイズ感は本当にオシャレなのか、感覚的に自分に合うサイズはデータでは測れないのではないか、ということだ。
オーダーメードのハイヒール「ゲージ(GAUGE)」を手掛ける神戸レザークロスは専門家による接客の重要性を強調する。「ゲージ」では3Dカメラを用いた最新の採寸方法によって、138万通りものバリエーションから自分にぴったりのシューズを購入することができる。ECでの販売は行わず、店頭で実際に採寸をした顧客のみが購入できるという。三越伊勢丹や高島屋が昨年オーダーメイドのパンプスを発売したことは記憶に新しいが、同社も百貨店でのポップアップが非常に好調といい、18日にはクラウドファンディング 「マクアケ(Makuake)」で資金調達を開始する。これを機に認知度を向上させ、さらなる顧客とのリアルな接点を作ることが狙いだ。同日にはアフターケアを担うクリーニング企業のホワイトプラスと共同でトークショーを含む採寸イベントも実施する。
「ゲージ」のマーケティングを手掛けるTO NINEの吉岡芳明・執行役は、「オーダー市場が盛り上がる中で、特にシューズにおいては専門性が欠かせない。採寸通りに作ったからといって、顧客が喜ぶわけではないし、フォルムが綺麗になるとも限らない。われわれは長年の経験に裏打ちされた専門性を売りにしたい」と説明する。2017年スタートのオンワードグループのオーダーメードスーツに特化したブランド「カシヤマ・ザ・スマートテーラー(KASHIYAMA THE SMART TAILOR)」も専門家による自宅でのリアルな採寸体験を売りに、最短1週間での納品を行っている。
通勤で電車・徒歩をメーンとする日本のキャリアウーマンにとって、ハイヒールの“履き心地”は見た目以上に重要視されるポイントでもある。吉岡執行役も「ブランドとしては“自分の足を大切に、無理のないスタイル”をテーマに打ち出している。オーダーには3カ月かかるが、それでも自己投資を惜しまない女性を中心に売れている」と話す。オーダーブランドではないが、17年にEC専売で再上陸したシンガポール発のシューズブランドの「チャールズ&キース(CHARLES & KEITH)」も、「アジアのマーケットでは顧客接点が欠かせない」と主張し、日本人を狙った限定コレクションや顧客接点となる実店舗の出店を計画していることを明かした。
単純な採寸にとどまらず、経験を積んだ職人の接客や消費者本人の感性といった、数値で測り得ない部分があるのがファッションだ。特に、ウィメンズのワンピースといった体に沿ったラインを必要としない洋服に関して、テクノロジーはどう対処するのか。スタートトゥデイは17年9月、自社商材のコーディネート提案をする“販売員”採用を開始したが、オンライン上でサイズを元にした接客を実現するのだろうか。今年は技術としての“マス・カスタマイゼーション”だけでなく、一歩先の“オーダービジネス”のあり方を考えたい。