写真家フランク・ホーヴァット(Frank Horvat)がシャネル・ネクサス・ホール(CHANEL NEXUS HALL)で開催中の大型写真展「Un moment d’une femme」のために来日した。同展のテーマはホーヴァットの長い写真家人生における重要なテーマでもある“女性”。 “女性”を切り口にしたホーヴァットのジャーナリスティックな初期作品の他、私的なプロジェクトなどを展示し、4月にはKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭のプログラムとして京都にも巡回する。
ホーヴァットは1940年代初頭、報道写真家としてキャリアをスタートし、世界中を旅しながら、フランスの週刊誌「パリ・マッチ(Paris Match )」などに寄稿を続け、55年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された展覧会「ザ・ファミリー・オブ・マン(人間家族)」に選出される。54年、パリに拠点を置いてからファッション写真に傾倒したホーヴァットは、モデルたちの偶然の表情や一風変わった構図など、報道写真家としての経験を活かしたルポルタージュ的な感覚を取り入れた表現を行う。60年代以降はファッションそのものよりも、無防備な色気の女性像を撮影し続けた。90年代にはいち早くデジタルカメラを採用し、フォトショップを用いた作品も発表。11年にはiPad用のアプリ「ホーヴァットランド(Horvatland)」を公開するなど、人並み外れた好奇心で時代の潮流を感じ取りながら写真の新たな可能性を見出してきた。現在89歳にして意欲的に活動を続けるファッション写真の巨匠が考える写真の定義とは?同展を開催するにあたり何に思いを馳せたのか。
ホーヴァット:良い考え方だね。これも少し難しい話だけれど、以前孫に「良い構図とは何か?」と質問をされたことがあった。私は「とても簡単なこと。1枚の写真に収まっている全ては収まるべくしてそこに存在している。入っていないものは、入るべきものではなかったからだ」と説明したんだ。この作品「Quai du Louvre, couple, 1955(ルーヴル河岸通りのカップル)」も真ん中にカップルがいて、明るいライン(ベンチ)とダークなライン(道とセーヌ河)が水平に並んでいる。これらは全てそこに存在するべきものだった。これが私の考える構図だよ。私はこの河岸よりも高いところを偶然歩いていた時に2人の姿を見た。その時、1/4秒くらいの時間で瞬間的に構図が浮かんだんだ。優れた写真の背景には、必ず予期しない何かが起こっている。これを“奇跡”と呼ぶのかもしれない。出合うことは少ないのだけれどね。