「アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)」は、2019年春夏コレクションのショー発表を18年9月から同年6月に変更する。これまで9月と2月のニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYFW)期間中に開催していたコレクション発表のスケジュールを変更し、6月に春夏コレクションを、12月に秋冬コレクションをそれぞれ発表する。6月に発表されるコレクションは10月から3月に、12月に発表されるコレクションは4月から9月に発売する。なお、2018-19年秋冬コレクションはNYFW期間中の2月10日に予定通り実施する。
アレキサンダー・ワン会長兼クリエイティブ・ディレクターによれば、このスケジュール変更は、消費者のペースに合わせて新商品の提供頻度を増やし、デザインにフォーカスすることで製作プロセスを最適化して、売り上げを増やすなどの狙いがあるという。「6月にニューヨークでショーを開催することを大変楽しみにしている。これまで顧客の反応を見るため『アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)』とのコラボコレクションや限定コレクションを発売するなど、ありとあらゆる商品提供の方法を模索してきた。これからのわれわれのショーは、世界中の顧客やファンに向けてブランドのDNAを強化し、引き続き商品提供に注力していく。この商品サイクル変更によって年2回のファッション・ウイークに限らず、世界中の顧客とさまざまなコミュニケーションをとることができる」と語った。
リサ・ガーシュ(Lisa Gersh)最高経営責任者(CEO)は「新しいシステムを通じてより良いサービスを顧客に提供できる。リゾートまたはプレ・コレクションという時代遅れの旧ファッションシステムから脱し、出荷する月に商品を再構成し、顧客との関係を深めながら一貫性のある商品を提供する」と話す。メーンコレクションは、プレ・スプリング・コレクション発表時期の6月とプレ・フォール・コレクション発表時期の12月に発表するが、バッグ、アクセサリー、「ティー バイ アレキサンダー ワン(T BY ALEXANDER WANG)」は従来通りのスケジュールで発表するという。
「アレキサンダー ワン」のコレクション発表時期変更によって、気になるのがNYFW主催者のCFDAと他のNYFW参加ブランドの動きだ。
電話インタビューに応じたスティーブン・コルブ(Steven Kolb)=CFDAプレジデント兼CEOは、イベントや日時が公式に認められたものかどうか確認できていないと語った。しかし、コレクション時期をずらそうとしている業界の動きはあるとし、6月と12月の開催のコンセプトについても「仮説的だ」としながらも、「今夏に動きは見られるかもしれない。いくつかのブランドは賛同する可能性がある」と明かした。
コルブ=プレジデント兼CEOはブランド名を明らかにしなかったが、賛同する可能性が高いブランドは「アルチュザラ(ALTUZARRA)」「ロダルテ(RODARTE)」「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」だ。これらのブランドはNYFWから離れ、パリ・ファッション・ウイークやパリ・オートクチュール・コレクションでコレクションを発表している。また、2月のNYFWでコレクションを発表予定の「シエス マルジャン(SIES MARJAN)」のジョーイ・ローレンティ(Joey Laurenti)CEOは、コレクション発表時期を6月と12月に変更する予定は今のところはないとしたが、「一般的に言えばプラスの変化だと思う。十分な数のブランドが参加するようであれば、間違いなく参加するだろう」とコメントしている。
NYFWのスケジュールに関しての議論は、今に限った話ではない。1998年、「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」がコレクションをパリ、ミラノ、ロンドンのファッション・ウイークの開催前に発表すると宣言し、「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」がこの動きに乗じた。「アレキサンダー ワン」が「ヘルムート ラング」のようにニューヨークのファッション業界を揺るがす震源地となる可能性もゼロではない。