なんとなく感じていたんです、「泣くかもしれない」って。
と、いきなり意味深な一文、しかも倒置法で始めてしまいましたが、それほど「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の2018-19年秋冬メンズに感動してしまったのです。ショーを見て泣いたのは、いつ以来でしょう?あ、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)が「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」のクチュール・コレクションでファッション業界にカムバックした時です。今から2年前。あれ、結構最近でした(苦笑)。
ご存知の通り、18-19年秋冬の「ルイ・ヴィトン」メンズは、キム・ジョーンズ(Kim Jones)=メンズ・アーティスティック・ディレクターのラスト・コレクション。クリエイションが好きなのはもちろんですが、彼と「ルイ・ヴィトン」メンズには、「ラグジュアリーを次の世代につなげること」とか「高価だから買えない人にさえ、ファッションがもたらす夢を与え続けること」なんかを勝手に期待し、半ば託していたくらいだったので、感慨はひとしおでした。
僕が泣いているのを目撃し、なぜかもらい泣きしたという(笑。いいヤツです)後輩記者によると、僕はショーの序盤から泣いていたと言います。確かに、ケニアの全景を織りやプリントで描いたルック、つまり本当に最初からイロイロ思い出し、考え、ウルっときてしまいました。
キムは「ルイ・ヴィトン」でのデビューとなった12年の春夏、今回同様ケニアに焦点を当て、マサイの伝統的な柄をメゾンのアイコン“ダミエ”のチェックと重ねました。最初のシーズンは自らの生まれ故郷に飛び込み、ルーツを探ることでクリエイションを見出したとも言えます。それが東京やアメリカの東&西海岸、南国などを経由して、今回のラスト・コレクションで再びケニアに凱旋。今季は自らヘリコプターに乗り、俯瞰してケニアを見渡し、写真に収めてコレクションのモチーフにしたのです。
そこに最初は「ルイ・ヴィトン」というメゾンの仕事、目の前の仕事だけで精一杯だった彼が、今はヘリコプターからケニア全土を見渡したように、業界全体を見渡せる程の人物に成長した、なんて意味を重ねるのは、考えすぎでしょうか?そして業界全体を見ていたからこそ彼は、若者のファッション離れ、ラグジュアリー離れを危惧して6年もの間、「シュプリーム(SUPREME)」コラボを頂点とする夢、僕らでも買えるキャッチーな小物、「なんとかして手に入れたい!」と思わせるバッグや洋服を出し続けようと努力してくれたのではないか?考えすぎかもしれないけれど、こんな風に思ってしまった時、涙腺は一気に崩壊してしまいました。
そのあとはただひたすら、彼の6年を思い出し、涙にくれるばかりです(笑)。あ〜、6年間、パリの「ルイ・ヴィトン」ショールームでの大試着大会は楽しかったな(笑)。
そして翌日、ショールームの展示会に赴いたら、確かにラスト・コレクションはモノすご〜くラグジュアリー、パイソンにビキューナなどなどいつも以上でしたが、キムの愛犬の柴犬ググのキーチャームを筆頭にキャッチーな革小物もたくさん。やっぱり「頑張れば買えるかも!?」って思わせてくれました。
キム「ルイ・ヴィトン」最後の撮影は、スタイリストの村瀬さんと、ファッション・ジャーナリストのマスイユウくんと3人で、ナオミ・キャンベル(Naomi Cambell)とケイト・モス(Kate Moss)、それにキムよろしく手をつないでの3ショットです(笑)。
キムには次も是非、「頑張れば買えるかも!?」という革小物と、「いつかは欲しい」と思えるバッグや洋服を作り続けて欲しいと思っています。