今日から2018年春夏オートクチュール・コレクションがスタートしました。あいにく今週のパリは連日雨。夜にスマホでグーグルマップを見ながら歩いていたら水たまりにはまり、ここは東京ではなくパリなんだと実感する初日です。パリの石畳はきれいだけど、雨の日に歩くのはおっくうです。
それはさておき昨日、オートクチュールの開幕前夜にふさわしいパーティーに行ってきました。「アズディン・アライア展」のオープニングです。会場はマレ地区にある、故アズディン・アライア(Azzedine Alaia)の自宅兼アトリエだったスペース。展覧会の内容はこちらに詳しいのでぜひご覧ください。
記事にある通り、パーティーにはカルラ・ソッツァーニ(Carla Sozzani)=ディエチ コルソコモ(10 CORSO COMO)創業者をはじめ、アライアのファミリーとも言える業界関係者がこぞって集まり、15時から20時まで開かれたオープニングは終始大混雑。パティオのような中庭でシャンパン片手にいつまでもアライアの思い出話に花を咲かせている様子から、彼がどれほど周囲の人たちに愛されていたかが伝わってきます。
アライアは1980年代の“ボディコン”ブームの牽引者とも言われますが、彼のことをそう呼ぶことに違和感を覚える人も多いでしょう。なぜなら日本で“ボディコン”はバブルの代名詞として使われ、その言葉の向こうには、芸人の平野ノラが演じるような扇子を片手にお立ち台で踊る女性たちの姿が浮かぶから。80年代にアライアが人気を博し、バブリーな女性たちが体のラインを強調するアライアの服に身を包んだことも事実だけど、2つをそのまま重ねることに疑問を覚えるのも理解できます。
水たまりにはまり道に迷いながらパーティーに向かう途中、そんなことを考えていたのですが、いざ会場に入り35体のアイコニックな作品群を前にしたら震えました。あまりの美しさにです。多くは黒と白の服で、刺しゅうなどの装飾はほとんどない布だけの服。なのに、丸みを帯びた腰とくびれたウエストのライン、大きく開けた背中のシルエットなどが圧倒的に美しく、大げさではなく立ちすくみました。そこに人の体はありません。それなのに、ドレープを寄せた布の奥に女性の体の美しい凹凸が見えてくるのです。不思議でした。もしかしたら会場がアライアの自宅だったこともあるのかもしれません。
花を見てその造形の見事さを単純に美しいと思うことはありますよね?花の形や色は必然的だから美しい。用途と機能を考え抜いた建築物が美しいことと近いと思います。アライアはチュニジア生まれということもあるからか、西洋の左右対称の服作りとは異なって左右非対称で、その美しいアンバランスの中のバランスが絶妙だと思います。トルコ出身のアルベール・エルバスのデザインにも通じるものがあります。
そこで、ジュリアナで踊る女性たちの姿は浮かんではきませんでしたが、女性の体のありのままを美しく見せるという意味で、アライアを“ボディコンブームの火付け役”と呼ぶのとは少々意味が変わりますが、“ボディコンシャスの牽引者”と呼ぶことは間違っていないと思います。
パリに行く機会がありましたらこの展覧会はぜひ。6月10日までです。