ギンザ シックス(GINZA SIX)6階の蔦屋書店内のギャラリー、ザ・クラブ(THE CLUB)でグループ展「ダイアローグ(DIALOGUE)」が開催されています。今回の展覧会はブラジルのアーティストにフォーカスするもので、言語をアートに昇華した世界的に著名なミラ・シェンデル(Mira Schendel)やアントニオ・ディアス(Antonio Dias)、デタニコ・アンド・レイン(Angela Detanico and Rafael Lain)3組の作品を展示販売します。開催前日のプレス内覧会で、ザ・クラブのキュレーションを行う山下有佳子マネジング・ディレクターに話を聞きました。山下さんは、サザビーズロンドン(SOTHEBYS LONDON)でのインターンを経て、サザビーズジャパン(SOTHEBYS JAPAN)でコンテンポラリー・アートを担当していました。ザ・クラブでは、欧米とアジアの架け橋になるような展示を通してアートの魅力を発信しています。
異なる言語および作品のダイアローグ
今回の展示のコンセプトは言語。その理由を山下さんに聞くと、「シェンデルはスイスで生まれブラジルで活躍、ディアスはミラノが拠点、デタニコはパリが拠点。母国語と他言語を組み合わせて作られるアートに注目してみました。翻訳機能やSNSの発達により最近、ランゲージバリアがなくなりつつあると感じています。いわゆる、グローバル化ということでしょうが、言語はそれぞれの国の特殊性を持った文化を生み出す力があると思います」と説明してくれました。この展示は異なる言語同士および、シェンデルやディアスといった巨匠と次世代のデタニコ・アンド・レインの作品同士のダイアローグ=対話を試みたそうです。
なぜブラジルのアーティスト?
日本では南米のアートはあまり馴染みがありません。ブラジルの3組のアーティストを選んだ理由に関しては、「メット・ブロイヤー(THE MET BREUER、2016年にオープンしたメトロポリタン美術館・新館)」でブラジル人女性作家の展覧会が開催されるなど南米アーティストが再評価されています。クラブでは、世界で知られているけれど日本で知られていないコンテンポラリー・アートを紹介し、広めていきたいと思っています」と言います。「シェンデルは神秘主義者だったこともあり、虚無的な空気感が漂う作風が特徴です。ディアスはもともとポップアートからスタートした人ですが、ブラジルが軍事政権下だった1960年代を、血の色である赤や土のような色を使用して表現しています」。照明を使用したデタニコ・アンド・レインの作品「LIGHTNESS」は、2007年「ベネチア・ビエンナーレ(VENICE BIENNALE)」のブラジル館で展示された作品です。山下さんはこの作品に関して、「光を用いたミニマル・アートで知られるダン・フレイヴィン(Dan Flavin)へのオマージュ作品です。各点字の間を光の線でつないで“LIGHTNESS”と表現しています。この展示のために制作してもらいました」と説明してくれました。価格は100万円弱。このようなコンセプチュアルな作品は、現品を販売するのではなく、新たに制作したものを証明書と共に納品するそうです。
今回はザ・クラブがオープンして第4弾目の展示になります。この前の展示は「パターン-紋様」というテーマで、クリストファー・ウール(Christopher Wool)や猪熊弦一郎などの作品を紹介しました。「猪熊弦一郎の作品は全て売り切れました。ここ2~3年、海外でも日本の戦後の作家への関心が高まっています。ハンス・J・ウェグナー(Hans J. Wegner)のビンテージチェアなども動きました」。銀座といえば外国人観光客が多い場所。ザ・クラブにも影響があるかと聞くと、「外国人旅行客も多いです。アメリカをはじめ、フィリピンやシンガポールなどからの旅行客が作品を購入していくこともあります」とのこと。目的買いというよりは、ふらっと入ってきて作品を買っていく人が多いそうです。ザ・クラブの平均的な1日の来場者数は20~30人。「ドアを開放しておけば、もっと来場者があるのでは?」との問いに、「あえて閉めています。アートは特別なもの。銀座の喧騒を離れて、それを見つけてもらう秘密の場所にしたいのです」と山下さんはほほえみました。「ダイアローグ」の会期は3月24日まで。