欧州の一部メディアで報じられたケリング(KERING)および傘下のグッチ(GUCCI)による脱税疑惑について、両社は正式に否定する声明を発表した。脱税疑惑を報じたのはフランスのオンラインメディア「メディアパート(MEDIAPART)」、イタリアの「レプレッソ ウィークリー(L’EPRESSO WEEKLY)」、そしてドイツの週刊誌「デア・シュピーゲル(DER SPIEGEL)」の3媒体。記事は機密文書をベースに書かれ、機密文書にはケリングとフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼最高経営責任者(CEO)がルクセンブルクのオフショア企業を通じてマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)=グッチ社長兼CEOに“報酬”を支払ったことが示されているという。
また、記事によると脱税は2010年から行われているという。さらに、オフショア企業などの活用によってビッザーリ社長兼CEOは1500万ユーロ(約20億円)を脱税しており、ケリングに至っては3倍に当たる4500万ユーロ(約60億円)の脱税を行っていると指摘した。
それに対して両社は、「ケリングとグッチは従業員を含む全員が法や規則を遵守するよう、ガバナンスを徹底している。ビッザーリ社長兼CEOについても税金を納めているイタリアの税務上の義務を全うしている」と声明を発表した。
さらに、「メディアパート」は、14年にジャン・フランソワ・パリュ(Jean-Francois Palus)=ケリング マネジング・ディレクターとビッザーリ社長兼CEOの間で交わされた書面によると、ビッザーリ社長兼CEOの給与は800万ユーロ(約10億7000万円)に上ると報じた。
グッチは17年12月にも、実際はイタリア・ミラノで実働していたとみられる管理職が統括する事業に関する収入を、イタリアよりも優遇税制が適用されるスイスで申告したと脱税容疑が掛けられており、イタリア財務警察が捜査中だ。この件の脱税額は10年から総額13億ユーロ(約1742億円)に及ぶとみられている。