熊のマークでおなじみの「ゴールデンベア(GOLDEN BEAR)」を展開するコスギが好調だ。衣料品不振の総合スーパーを主力にしながらも2010年以降増収を続け、同社の2018年2月期は売上高が前年比3.0%増の170億円、営業利益は同43.8%増の15億8000万円を見込む。経営の指揮をとるのは、小杉産業の創業家出身の小杉佐太郎・社長だ。50歳以上のファッション業界人であれば、小杉産業と聞けばピンと来るかもしれない。2009年に自己破産した名門企業だ。
コスギは、2009年に倒産した小杉産業の「ゴールデンベア」事業を引き継ぐ形で誕生した。小杉産業は1883年創業、ピーク時の1986年には年商800億円を超える名門企業だったが、00年代に入ると経営不振に陥り、05年に投資ファンドのジェイ・ブリッジが、07年には伊藤忠商事が当時25%出資していたレゾン投資事業有限責任組合が買収し、その傘下で経営再建に取り組むも、09年2月に自己破産した。負債総額は債権者418人に対し、約98億円だった。
結局、同年3月に大阪のアパレルの小泉グループがコスギを設立し、「ゴールデンベア」事業のみを承継した。「民事再生ではなく、自己破産というのが当時の苦境を表している。引き取り手がいなかった」と振り返る通り、どん底からの再出発だった。小杉社長に聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):主力の「ゴールデンベア」事業の状況は?
小杉佐太郎コスギ社長(以下、小杉):売り上げは2010年以降、ずっと右肩上がりで増加し、直近では小売りベースで212億円の見込みです。主要な販路であるスーパーは突発的なセールが多いのでプロパー消化率は出しにくいのですが、最終消化率は94%です。
WWD:売り上げも伸びていて、最終消化率も高い。その理由は?
小杉:特別なことはしていないんですよ。増収の分かりやすい理由の1つは、以前3割にすぎなかったウィメンズを強化してきたから。今は全国にある約750の売り場のうち、メンズが375、ウイメンズが371になり、売り場の数は拮抗するまでになりました。80%がGMS(スーパー)、15%が百貨店、残りがECなど。しかし僕らはGMSだから、百貨店だからという売り場の作り方をしていません。基本的にはどの売場でも全てオリジナルの什器とPOPを作り、販売員を立てています。
WWD:スーパーの衣料品売り場にオリジナルの什器とPOPを作り、販売員を立てるのは珍しい。ただ、スーパーの衣料品売り場は不振が続いています。
小杉:基本的にスーパーは1階が食品、2階が衣料品売り場ですが、スーパーに足を運ばれるお客さまのうち4人に3人は、2階の衣料品売り場には来てすらいただけません。だからこそ、どうやって足を運んでいただくか。売り場に来ていただく理由をこちらから作る必要があります。「ゴールデンベア」は全売り場に毎週10型の商品をデリバリーするようにしています。毎週売り場が変われば、お客さまがちょっとのぞいてみようかなという気になるかもしれない。そして売り場の主役は販売員です。当社は全国に1071人の販売員がいて、彼女/彼たちに素敵な舞台を用意したい。什器はその舞台装置のようなものです。
WWD:売れ筋の商品は?
小杉:「ゴールデンベア」の売れ筋商品の一つに、ポロシャツがあります。われわれは常に、ずっと着ていただくためにどうしたらいいかを考えてきました。ポロシャツがヘタって見えるのは襟が丸まってくるから。丸まらないために襟の素材をダブルフェースにしました。コストは100円くらい上がりました。しかし出来上がった商品を社員に家で30回ほど洗ってもらいましたが、まったくヘタらなかった。
WWD:社員が自分で洗うんですね。
小杉:外部の検査機関にももちろん出しますが、それでは単にAとか、3級といった文字情報に過ぎない。自宅で30回洗うのって、すごく大変ですよ。一週間くらいはかかりますし。でも、だからこそリアリティーと説得力が出る。社内の新商品説明会の時には、30回洗った商品担当者自らが販売員に説明し、そのかいもあってポロシャツの売り上げは1.5倍になりました。
WWD:しかし、長持ちだと、その分服が売れなくなってしまうのでは?
小杉:いいんです。コスギの社是は「誠は無二の宝なり」で、これは小杉産業の時から変わっていません。同じように「ゴールデンベア」のポリシーは、“誠実・長持ち・実用的・上品・上質”です。ポロシャツの価格は、4900円。でも、5年10年着ていただいた後でも形が変わらないし、他のどんなブランドよりも長持ちするという自信もある。いい服とは、お客の期待を超える服。いつまでも愛着をもっていただきたい。350万着を生産する「ゴールデンベア」だからこそできるプライスで、お客さまの期待を超えるのが私たちの目標です。
WWD:その先に利益があると。
小杉:そうです。