「ケンゾー」が公開した2018年春夏のショートフィルムにカメラマン役として登場するミュージシャン、アレックス・ザング・ホンタイ
ここ日本では、コアな音楽とハイファッションの距離は遠いと思われがちですが、海外のブランドはオーバーグラウンドもアンダーグラウンドも関係なく、そのブランド独自の感覚で広告やショートフィルムなどにミュージシャンを起用しています。例えば17年にラフ・シモンズ(Raf Simons)が手掛けた「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」ではニューヨークを拠点に活躍するミュージシャン、キャロライン・ポラチェック(Caroline Polachek)を広告に起用。「ミュウミュウ(MIU MIU)」は18年プレ・スプリング・コレクションの発表に伴い、一夜限りパリにオープンした「ミュウミュウ クラブ」でバンクーバー出身の女性ラッパー、トミー・ジェネシス(Tommy Genesis)にオープニングアクトを務めさせました。
今回「ケンゾー」が公開した18年春夏のショートフィルムには、インディーズシーンで注目されている台湾出身のミュージシャン、アレックス・ザング・ホンタイ(Alex Zhang Hungtai)が登場しています。アンダーグラウンドで地道に活動をしていた彼ですが、17年に放送された米テレビドラマ「TWIN PEAKS THE RETURNS」の5話に出演を果たしました。本作ではデヴィッド・リンチ(David Lynch)監督の息子であるライリー・リンチ(Riley Lynch)と編成したバンド、トラブル(Trouble)のメンバーとして登場しています。このバンドは劇中にとどまらず、なんと7インチのレコードまでも出す本気っぷり!
という興奮はさておき、アレックスは実は「トーガ(TOGA)」のメンズライン「トーガ ビリリース(TOGA VIRILIS)」も関心を寄せるミュージシャンです。15年春夏コレクションのプレゼンテーションでは、ダーティー・ビーチズ(Dirty Beaches)名義で、ライブパフォーマンスを披露しました。古田泰子デザイナーも注目する存在なのです。
そんな活躍ぶりを見せる彼は、女優兼モデルの水原希子や「スター・ウォーズ(STAR WARS)」シリーズで人気を集めたハリウッド女優のジェシカ・ヘンウィック(Jessica Henwick)という錚々たるメンバーと「ケンゾー」のショートフィルムで共演しています。監督は「A GIRL WALKS HOME ALONE AT NIGHT」で長編映画監督デビューしたアナ・リリー・アミールポア(Ana Lily Amirpour )が担当し、ニューヨークのロックバンド、ヤー・ヤー・ヤー・ズ(Yeah Yeah Yeahs)のフロントウーマンを務めるカレン・O(Karen O)が書き下ろした楽曲「YO! MY SAINT」を提供しています。このショートフィルムは1967年のカルト映画「欲望」にオマージュを捧げつつ、音楽と映画、ファッションを融合させた作品です。
日本でもアンダーグラウンドな音楽とファッションの距離がもっと縮まりますように。