「ヴェトモン(VETEMENTS)」は2月8日から3月2日まで、ロンドンの老舗百貨店ハロッズ(HARRODS)のショーウィンドーを古着の山で埋めるインスタレーションを実施する。古着は通行人やハロッズの従業員が「かつて愛していた」服で、ディスプレー期間後はイギリスの慈善団体、NSPCCに寄付されてリサイクルされる。「ヴェトモン」は同様のインスタレーションを今後1年で世界50カ所で行う予定だ。
デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)「ヴェトモン」ヘッド・デザイナーの弟で同社の最高経営責任者(CEO)のグラム・ヴァザリア(Guram Gvasalia)は、「世界中の地域コミュニティにこのコンセプトを届ける。大量生産と市場飽和は現代において最も深刻な環境問題の1つ。ブランドは一定の成長を達成するため、数字を人為的に増やし需要の高さを強調するが、現実はというと供給過多で在庫は山積みだ。ファッションブランドが供給する30%の商品は売れずに廃棄されると見積もっている。このハロッズとのインスタレーションが素晴らしいのは、ハロッズが抱える4000人の従業員に着なくなった服を寄付してもらった点だ。他のブランドにもこのインスタレーションに協力してもらい、デッドストックを寄付してもらえないか尋ねたが、どのブランドも実際に売る数よりも多く生産していることを認めたくないようだった」と話す。
「ヴェトモン」は過去にも同様のインスタレーションを、ロサンゼルスのマックスフィールド(Maxfield)とニューヨーク五番街のサックス・フィフス・アヴェニュー(SAKS FIFTH AVENUE)のショーウィンドーでも実施した。
“モノを買わない”というメッセージを伝えつつ、どうやってブランドの目標やポリシーとバランスをとるのかという質問には、「『ヴェトモン』のポリシーは“できるだけ多く売る”ということを絶対にしないこと」として、「われわれはスローダウンやスローファッション、あまり買わずに質の高いものを長期で使うという考えが好きだ。このインスタレーションを作った目的は、消費者の大量生産・大量消費問題への関心を高め、ブランドには、市場を異常なほど飽和させていることや地球に悪影響を与えることに対して罪悪感を抱いてもらうことだ。そして可能であれば、この問題に関して適切で正直な会話ができればいいと思っている。『ヴェトモン』は、巨大なブランドコングロマリットに比べれば小さなプレーヤーにすぎない。一番深刻なのは、そういったビッグブランドは数字の結果を求めすぎるために、大量生産と在庫過多によって成長していると見せかけていることだ。だが、皮肉にもそうしたブランドはたいてい、他のブランドよりもサステイナビリティーの重要性を謳っている」とグラムCEOは訴える。
「サステイナビリティーは『ヴェトモン』のコアバリューだ。ファーストコレクションで『リーバイス(LEVI’S)』のビンテーンジジーンズを再構築したように、古くて誰もいらなくなったものに第2の命と新しい用途を与えてきた。われわれはオーダーされた分だけを店舗に供給し、再び補充することも、売り切れになったアイテムを再生産することもしない。インディペンデントなブランドとして、『ヴェトモン』かサステイナブルな企業であるために常に新たな可能性を探求している。もしすべてのビッグプレーヤーが結託し、適切で正直な議論を避けるのであれば、われわれは若手デザイナーやインディペンデント・ブランドに『声を挙げろ。他の誰かが地球を救ってくれるだろうと考えるな』と訴える」とインディペンデント・ブランドのサステイナビリティーのあり方を語った。