福井県で先週から続く大雪の影響が、地場産業である繊維や眼鏡業界に及んでいる。13日に再び大雪の予報が出たため、西川一誠・知事は県内の企業に対し、県民生活の維持に不可欠な場合を除いて13日の営業をできる限り控えるよう要請を出した。従業員の安全などを考慮し、県内に工場を置くワコールホールディングス、鯖江市の複数の眼鏡メーカーなどが休業している。
ワコールHDは13日、県北部の主力工場である北陸ワコール縫製を休業した。先週の大雪で6〜8日に休業を余儀なくされ、ようやく正常化しようとした矢先だった。同工場では高級ブランド「ワコールディア(WACOAL DIA)」など、手の込んだデザインの商品を約230人のスタッフで作っている。「例年それほど雪が積もる地域ではない。通勤する従業員の安全を第一に考えて再び休業を決めた」(同社広報)。店頭への配送遅れなどの影響は現時点ではないと予想している。
一方、福井県内に本社および10工場を持つ繊維大手のセーレンは、先週も今週も工場を稼働させている。同社の担当者は「お客さまに迷惑がかからいように、可能な限り操業を続けている。社員の安全に配慮し、出社できる一部の社員が対応している。とはいえ、人数が限られる上、物流も滞っているので、当然効率は下がっている」と説明する。
国内生産の95%以上を占める県内の眼鏡産業にも波及している。
鯖江市のボストンクラブは昨年10月にオープンした直営店と本社を先週2日間休業。今も一部の従業員の出勤が困難だという。小松原一身ボストンクラブ社長は「3~4日間、入出荷がストップし、売り上げに少なからず影響が出ている。また、今週の雪の予報も懸念している。4月期決算までに挽回したい」と話すが、13日も物流はストップしたままだという。同じく鯖江市のシャルマンは、出勤できない社員はいるものの、全社的な休業はしていない。「ただし、物流がストップしているのは大きな痛手」(同社)。福井市の増永眼鏡は、雪が強くなった6日午後から本社と工場の機能を停止。9日にいったん稼働したが、13日は再び休業した。「今月出展を控える『ミド』(ミラノで開催される眼鏡国際展)用のサンプル出荷はギリギリ間に合ったが、損失は大きい」(同社)という。
小売りにも影響が出ている。県内で5店舗を運営するユニクロは13日、武生店を休業し、他の店舗も営業時間を変更した。武生店のある越前市は13日11時に観測史上最大の積雪130cmを記録した。休業店舗については「商品のデリバリーなどには問題がないものの、交通手段のマヒによってスタッフを確保できないと判断」(ファーストリテイリング広報)した。西武福井店は13日正午時点では通常通りの営業。先週の大雪の際は閉店時刻を早めるなど、天候に応じて対応してきた。「百貨店の場合、特に食品売り場は地域の生活インフラの役割を担っており、その要望にはきちんと応えていきたい」(そごう・西武広報)という。