ファッション

要注目の若手「ウェールズ ボナー」デザイナーが語る原点と日本上陸

 ロンドンのブランド「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」を手掛けるグレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)は、今最も注目されている若手デザイナーの1人である。ジャマイカ出身の父親を持つ彼女は、自身のルーツであるブラック・カルチャーをテーラリングに織り込んだデザインが特徴だ。オーバーサイズが主流の現在において、ストイックなまでに計算し尽くされた細く、美しいシルエットは異彩を放つ。2016年に「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」グランプリを獲得するなど業界内でも評判は高く、その期待に応えるように成長を続けている。現在の卸先はロンドンのドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)、セルフリッジ(SELFRIDGES)、マッチズ ファッション(MATCHES FASHION)、ミラノのディエチ コルソ コモ(10 CORSO COMO)、パリのギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)など有力ショップも多い。取材を受けることにはあまり積極的ではないことで知られている彼女だが、1月のロンドン・メンズ・コレクション期間中に独占取材に成功。多忙なスケジュールを調整してくれたボナーは落ち着いた口調で、最新コレクションや自身のファッション哲学、日本でのビジネスについて語った。

ー2018-19年秋冬コレクションのインスピレーションは?
グレース・ウェールズ・ボナー「ウェールズ ボナー」デザイナー(以下、ボナー):「Des Hommes et des Dieux - of Men and Gods」というタイトルの映画からインスパイアされました。水兵が故郷に戻ってくるというストーリーで、彼が港に戻る頃には文化がすっかり変化していて、自分の故郷である島を遠くから眺め、そして遠くから集団行動の傾向を理解していくーーそういった道のりをコレクションで表現しています。具体的にはセーラー服の要素や1940年代のシルエットを取り入れました。またアーティストと共同製作したプリントを使い、私が好きなカリビアンのエネルギーを表現しています。

ー今コレクションのキーワード“Creolite”とは“活発にアイデンティティーを形成するプロセス”を意味しているそうだが、あなたにとって“Creolite”とは?
ボナー:流動的で減速していくような、漠然として、やり終えていない状況といった感じでしょうか。“Creolite”の美学は、異なる要素をミックスし、コンスタントに変化しながら進化していること。今はそのような状況に興味があります。

ー18-19年秋冬コレクションはこれまで軸にしていたテーラリング以外の要素が増えた気がしたが、変化の理由は?
ボナー:そうですね。常にテーラリングには興味があるのですが、今回は“テーラリングをワードローブとしてどうスタイリングするか”を強く意識しました。テクニカルでスポーティーな要素を多く取り入れることによって、これまでとは異なる表現ができたと思います。

ーコレクションのインスピレーション源は何から得ることが多い?
ボナー:文学からインスピレーションを得ることが多いです。文学は私に鮮明なイメージや世界観を描かせてくれます。文章の内容を理解してからビジュアルを想像し、それをさまざまなアイデアに発展させます。そのアイデアをテクスチャーやシルエット、ショーのBGMに落とし込んでいきます。最も重要なのは、強い世界観を作ることです。完成したコレクションと最初に描いた世界観を比較し、かけ離れていないかを最終的に確認します。

ーそもそもファッションに興味を持つようになったきっかけは?
ボナー:まずファッションの“表現性”に興味を持ったのがきっかけでした。洋服はコミュニケーションの手段であり、私にとってとても大切なもの。幼い頃から洋服や生地には興味がありました。小さい頃に触った生地の感覚は今でも覚えています。

ーメンズからスタートしたのはなぜ?
ボナー:“表現性”を軸にした時に、メンズの方がさまざまな表現に挑戦できると思ったからです。それに今は女性が男性のウエアを当たり前に着るように、メンズウエアはウィメンズに変換しやすいので。でも今はウィメンズもデザインしているので、ショールームにはメンズとウィメンズの両方が並んでいます。

ー自身のブランドを通じて表現したいことは?
ボナー:ヨーロッパ目線のラグジュアリーとアフロ・カリビアンのアイデンティティーを融合させたラグジュアリー・ブランドを作っていきたいです。その中間地点に立つことで、センシティブなブラック・カルチャーを多くの人に理解してもらいたいと思っています。

ーファッション以外に挑戦したい分野は?
ボナー:すでに製作を始めていますが、フィルムのプロジェクトです。それからアーティストやライター、ミュージシャンとのコラボレーションには常に興味があります。今年はそういう人とのコラボを数多く行いたいです。

ープライベートの時間と仕事は意識して分けている?
ボナー:自分のブランドを持つと、プライベートと仕事の間に境界線を引くのは難しいですね。どうしても進行中の仕事に集中してしまいます。だから意識的にリサーチする時間やフィルム製作に取りかかる時間を増やし、デザイン以外の時間も作るようにしています。結果的にその時間が次のコレクションや新しいプロジェクトのアイデアにつながるので。

ーLVMH賞を受賞してから1年以上経ったが、何か変化は感じるか?
ボナー:残念ながら、その質問にはお答えできません。

ー若手デザイナーがメゾン・ブランドのデザイナーに抜てきされることも少なくないが、興味はあるか?
ボナー:ごめんなさい。その質問にもお答えできません。

ー現在のロンドン・メンズ・コレクションについてはどう思う?
ボナー:「キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」のキコをはじめ、若手デザイナーたちが活躍していてとても面白いです。若いデザイナーたちが自分たちの世界観を次々と築き始めていますよね。ロンドンにはアイデアを自然と進化させる雰囲気があるのだと思います。

ー今後、日本でビジネスを広げる予定は?
ボナー:もちろんあります。これまでも多くの日本のリテーラーと取り引きし、反応もよかったので日本市場にはすごく興味があります。まだリサーチ中ですが、今年の後半には日本に行きたいと思っているので、今から楽しみにしています。

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