宮澤高浩・社長。取材時に青山のオフィスで。Tシャツは発売したばかりの「ゾゾ」
スタートトゥデイ傘下のクラウンジュエルが運営する「ゾゾユーズド(ZOZOUSED)」に3月1日、「コメ兵」とゲオが運営する「セカンドストリート(2ND STREET)」の2社が出店した。これまで自社で買取・販売を行ってきたクラウンジュエルだが、これを機にECモールとしてのマーケットプレイス事業を開始した形だ。これによって現在約100万点ある商品数を120万点まで伸ばし、国内最大級のリユースファッションモールを目指すという。何かと注目を集めるリユース市場だが、進化を続けるクラウンジュエルの宮澤高浩・社長は、市場をどう見ているのか。
WWD:今回の提携の経緯を教えてください。
宮澤高浩クラウンジュエル社長(以下、宮澤):「ゾゾタウン」に多くの会員数を持っていて、ユーズドに対するニーズも大きくなっている中で、自分たちの買い取りだけではない、急速な商品の確保が必要でした。それを一気にこのタイミングでやりたかったんです。
WWD:二次流通ではよく「売る在庫が足りない」という話を聞きますが。
宮澤:商品が足りないことも1つの大きな理由です。自社で買い取って販売をしていて、非常に回転率がいいんです。もっと在庫があれば、それだけニーズはあって、もっと欲しい顧客がいるのではないかと思います。
WWD:提携企業としては、売り場が広がるイメージですね。
宮澤:企業からすれば、そうですね。ヤフオクや楽天市場と同じ立ち位置になります。
WWD:今後、さらなる企業と提携する可能性はありますか?
宮澤:当然です。2社に限らず、たくさんの出店者に出ていただきたいと思っています。ビンテージなど、これまでメーンで扱ってこなかったジャンルも含めて、広げていきたいです。
READ MORE 1 / 2 そもそも、二次流通にとって一次流通は必要なのか
マーケットプレイスとしての「ゾゾユーズド」のサイトイメージ
WWD:「ゾゾユーズド」では、買い取りと販売のどちらを重視しますか。
宮澤:どちらも大切ですが、やっぱり買い取りですね。最近はデータをもとに、買い取り時にある程度の売れ行きや価格が予測できます。つまり、しっかり買い取りができれば、売り上げもついてくる。
WWD:買い取りもデータ活用の時代ですね。
宮澤:もちろん、システム化されているところもあれば、人力で真贋などを見る場合もありますが、買い取りの値付けはかなりデータ化されています。
WWD:「ゾゾユーズド」最大の特徴といえば新品の商品と同じプラットフォームで販売をしていることですが、二次流通に対する一次流通(アパレル)側の反応をどう感じていますか。
宮澤:リユース事業を始めて十数年経ちますが、その時から比べるとリユースに対する理解は得られてきたかなと思います。「ゾゾユーズド」開始の際に説明にうかがったブランドもありましたが、市場のニーズが確実にあるという一定の理解が得られてきたので、状況は変わってきました。ただ、全てがポジティブではないですね。
WWD:そもそも、二次流通にとって一次流通は必要なのでしょうか。
宮澤:当然です。商品の魅力を伝える一次流通がないと商品は流通しません。
WWD:つまり、「ゾゾタウン」の成長とともに「ゾゾユーズド」も伸びていると。
宮澤:伸びています。当社でも、一次流通の成長は欠かせません。
WWD:一方で(スタートトゥデイ傘下だったブラケット運営の)「ゾゾフリマ」は撤退してしまいましたが、「ゾゾユーズド」とは何が違ったのでしょうか。
宮澤:「ゾゾフリマ」は非常に後発的でした。「ゾゾフリマ」単体で見たときに成長はしていたのですが、市場を見るとすでに競合が多かった。かたや、「ゾゾユーズド」はネット専売の二次流通というのが新しく、市場で勝てたことが大きかったと思います。
WWD:つまり、「ゾゾユーズド」は市場では先行していた?
宮澤:「ゾゾタウン」という一次流通とのシナジーもあり、B to C領域で大きな可能性を秘めていました。
WWD:「ゾゾユーズド」のようなEC専業の二次流通の特徴は何ですか。
宮澤:実店舗と比較すると、世の中に対して早く情報を広めること、また、手間をなくすという観点ではインターネットが圧倒的です。スピード感を持って消費者との距離を縮めることに特化できたのが特徴だと思います。
WWD:今回提携をする「コメ兵」「セカンドストリート」はともに実店舗を持っていますが、そういったオフラインでのビジネスの可能性はありますか。
宮澤:可能性はありますが、具体的にはないですね。やはり、すでに実店舗を持っている企業がたくさんあって、そこに食い込んでいくのは非常に厳しいですから。
READ MORE 2 / 2 二次流通にも頭打ちがくるのか
WWD:成長著しいファッションリユース業界ですが、いつかは頭打ちがくると思いますか。
宮澤:数年なのか、数十年なのか、成長は続きます。が、頭打ちはいつかきますよね。二次流通だけで盛り上がることがなかなか難しい。
WWD:一般的に考えて、一次流通の成長が止まっても、二次流通(中古品)だけで循環することも可能なのかと思ってしまいます。
宮澤:ファッションは“生もの”感が強いので、何回もサイクルできる商品はごく一部です。車や家具のようにビンテージとして何回も使いまわすことができるかというと難しい。当社では発売から3年を買取期限の1つの目安としていますが、一度買ってもらって最低ワンシーズン(1年)着て、すぐに売ったとしても、3回しか流通できないですよね。
WWD:二次流通でも、そんなに消費サイクルが早いんですね。
宮澤:冬物を買い取ったらその季中に売ることが重要です。新しいものの方がすぐに売れやすいですから。二次流通以外の切り口で考えれば、もっと可能性があるかもしれませんが。
WWD:例えば、どんなことが考えられますか。
宮澤:毎日お店で洋服を着替えるようなやり方とか。レンタルでもないですが、1回着ていくら、みたいなやり方です。そうすれば洋服の価値を最大化して流通し続ける仕組みは作れますが、それでも何年も使えるということはないと思います。
WWD:やはり、一次流通が売れ続けなければいけないと。
宮澤:アパレルが商品を長期的に循環させようとしなければ、難しいですね。そもそも、ずっと使い続けられる商品作りをしているブランドが少ないですよね。例えば「パタゴニア(PATAGONIA)」は自社でユーズド販売をしていますが、業界全体では安く早く作って、使い捨てるという流れが主流だと感じます。
WWD:以前、ストライプインターナショナルが運営するレンタルサービス「メチャカリ」と連携をして、一度レンタルされた商品を「ゾゾユーズド」で中古として販売するということをやっていましたね。
宮澤:一度レンタルされた商品は委託販売をしていました。ブランドがこうした二次流通に取り組むことはすごくいいことだと思います。こうした一次流通の先にある売り場として、もっと「ゾゾユーズド」を使ってもらえたらうれしいです。
WWD:今後さらなるアパレル企業との連携も可能性はありますか?
宮澤:もちろんやっていきたいと思いますが、ブランドとその顧客にとってどんなメリットを与えられるか、ブランドのイメージを損なわないか、そして一次流通の邪魔をしないか、など考慮すべきハードルは多いですね。
WWD:何か、一次流通との新たな連携の仕方はないんでしょうか。
宮澤:細かい事例ですが、社員販売で購入した店頭販売員の洋服を特別価格で買い取るという施策を企業と組んでやっています。毎シーズン何着も購入するけど、すぐに着ることができなくなるなど、社員販売は働く人の負担になっています。これまでは黙ってブランド古着に売っている人も多かったようですが、表立って企業と組むこともありだなと。今は試験的ですが、もっと広げていければいいなと思います。企業と組めば販売員がそのシーズンにどういった商品を着るかがあらかじめわかるので、販売員に対しても購入前に下取り価格を提示することができます。そうすると販売員も安心して購入できるんです。
WWD:写真を撮るだけで現金化される「CASH」もそうですが、購入する際に“いくらで売れるか”が分かっていると購入のハードルが下がるような気がします。
宮澤:時代の流れがそうなっていますよね。リユース事業はモノに価値をつける行為、値付けです。その価格がテクノロジーの進化やデータの蓄積によって、どんどん可視化されてきました。一方で世の中には失敗したくない、めんどくさいことをしたくない、という顧客がたくさんいる。だから、先ほどの販売員の例もそうですが、安心させてあげるということもリユース事業の根幹にあると思います。この安心によって、チャレンジングな購買行動に踏み出せるよう後押しをするんです。
WWD:新しい商品を買うための事前行為として、買い取りがあるとも考えられますね。
宮澤:二次流通は一杯になったクローゼットを空ける目的があります。でも、これが購入の動機になったかどうかは数値で説明できないので難しいですね。だから、買うときに下取りできる“買い替え割”は非常にわかりやすい策だったと思っています。