「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」でデザイン部門バイス・プレジデントを務めていたアビー・モリアーティ(Abby Moriarty)が、Tシャツブランド「1920」を立ち上げた。「1920」というブランド名は、“Tシャツ”がウェブスター辞典に登録された年に由来している。モリアーティは、ラフ・シモンズ(Raf Simons)が「カルバン・クライン」のチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任して6カ月後にリストラに遭った。
「自分自身を見失った」とリストラ当時を振り返るモリアーティは、現在は廃止されている低価格ライン「カルバン・クライン ホワイト レーベル(CALVIN KLEIN WHITE LABEL)」でリードデザインを手掛けていた。「1920」では、アメリカン・スポーツウエアというコンセプトは維持しながら、モダニズム的なデザインを採用している。「リストラは本当にショックな出来事だったけど、私がそこで学んだすべてのものを使って何ができるかを考え始めた。『カルバン・クライン』で働いていた時、年に4回は香港やバングラデシュ、スリランカなどを仕事で訪れていた。私たちはどうすれば少ない投資でより多くを得ることができるかを考えていて、それが環境や文化に及ぼす影響には思いが至らなかった。その経験のおかげで、1歩下がってファスト・ファッションがどれだけ市場に影響を与えてきたかを俯瞰視することができた。利益を優先するブランドが、これまでやってきたことを乗り越えるのは難しい。私はシンプルであることと私たちの文化の主軸となるものにフォーカスしたかった。私のインスピレーションの多くはトレンドからではなく、アートからの影響が大きい」と語る。
「1920」のTシャツのインスピレーション源は、モダニズム建築のル・コルビュジエ(Le Corbusier)や、ポップカルチャーのアイコンでもある米俳優マーロン・ブランド(Marlon Brando)だ。Tシャツはアメリカ製のスーピマコットンを使用し、ブルックリンのグリーンポイントで製造している。メンズ、ウィメンズそれぞれロールネックのクルーネックTシャツ、クラシックなクルーネックTシャツやスエットなどをそろえる。価格帯は80〜145ドル(約8400〜1万5000円)。
中間業者を通さず直接消費者に届ける販路を維持していく予定だが、商品数とパートナー先を限定して卸も検討していくという。「どのブランドも非常に多くの市場変化に直面し、どうしたら抜け出ることができるかを模索している。顧客にうそをつかず、素晴らしい商品を提供しなければならない。一方で、強いアイデンティティーを持ち、ブランドのストーリーを伝えることも非常に重要だ」とモリアーティは語る。生産の透明性で若者の支持を得るエバーレーン(EVERLANE)とコンテンポラリーブランドとの間に、ブランドを位置づけることが目標だという。