田中文江デザイナーによるウィメンズ・ブランド「ザ・ダラス(THE DALLAS)」が3月19日、「アマゾン ファッションウィーク東京(Amazon Fashion Week TOKYO)」で初のランウエイショーを行う。さまざまなアパレルブランドでデザイナーとして活躍した後、2015-16年秋冬に「ザ・ダラス」を始動し、アンティークパーツを組み合わせたイヤリングやハーネスが人気の火付け役となった。ブランド立ち上げから2年目でショー開催を決意した経緯や意気込みをはじめ、ブランドに対する熱意とこれからのビジョンについて聞いた。
WWD:東コレ初参加となる経緯は?
田中文江「ザ・ダラス」デザイナー(以下、田中):18年春夏の東コレを見たときに何となく「出たいな」と思っていました。それから数日後に、参加受付の締切日を確認したら2日後に迫っていて、慌てて申し込みました。ぼんやりとしか「出たい」と思っていなかったはずなのに……と申し込んだ理由を考えていたのですが、工場や商品を買ってくれたお客さま、ブランドに携わってくれた方々など、全ての人たちに感謝の気持ちを伝えたいという結論に至り、参加することを決めました。
WWD:ランウエイショーで「ザ・ダラス」のどういう面をアピールしたいか?
田中:ショー自体はすごくソリッドです。ショーでは服を見てもらいたいですが、音楽と共に耳で聞いて、目で見て、そして匂いを感じでもらいたいです。特に匂いは、嗅ぐとその時の風景や気持ちなど過去の記憶を思い出させてくれるから、ショーの中に取り入れたいです。近頃はSNSなどの情報で溢れていますが、その現場でしか味わえないブランドの良さを知ってもらいたいですね。
WWD:東コレについてどのような印象を持っている?
田中:見る側だった頃は、「東京でどんなことが動いているんだろう」と感じたり、「海外にこのブランドがあったらいいよね」って、次の流行りを予測する楽しさも味わえたりするのが東コレの印象でした。日本人の私にとって、パリコレはリアルではありません。でも東コレはリアルです。東京で何が流行っているのかや、着たい服を探すなど、東京だから手に入るような情報が得られる場です。
WWD:ショーを見る側からやる側になって感じたことは?
田中:準備には相当体力を使うし、いろいろな人の力を借りないと絶対にショーは成功できないと思いました。ショーで自分がやりたいことをみんなに伝え続けて、形になるまでエネルギーを注ぎ切りたいです。
WWD: ショーのテーマは?
田中:今の自分の気持ちや着たい服を表現したいです。ショーの目的は“感謝”を伝えることにありますが、「ザ・ダラス」の根本に戻りたいですね。凛として自立した女性であり、自分が好きな背景を今回のテーマに落とし込みたいです。
WWD:その背景とは?
田中:メンズ的でありつつ、強い女性らしさと華やかなカッティングやラインのこだわり、絶対こうじゃなきゃいけないというルールをなくした自由さを取り入れたいです。
WWD:ショーの先にあるビジネスについてはどう考えるか?
田中:今後は海外展開を目指していきたいです。どこの国かはまだ決めていませんが、日本からは出てみたいですね。日本でのビジネスはアクセサリーがどうしても先立ってしまうので、そこから一旦離れて服をメーンで見てもらえる環境で挑戦してみたいです。
WWD:洋服やアクセサリー以外で挑戦したいことは?
田中:香水が好きなので、オリジナルの香水も今後作っていきたいです。「ザ・ダラス」は常にチャレンジするコレクションを目指しているので、何か面白いことをやってくれそうというイメージも着々と浸透してきています。服で何かを発信するのはもちろん、常に次にやりたいことや新しいことに挑み続け、「これがあると絶対にみんなが喜ぶよね」ということをして、私自身も喜びを感じたいですね。
WWD:その喜びはどんな時に感じる?
田中:イヤリングを作っているときですね。ポップアップストアでイヤリングを販売することでどんどん喜びが強くなります。アンティークパーツを組み合わせたイヤリングが支持されて、累計1万個を販売しています。お客さまからの「かわいい!」「これよく使ってます」など生の感想を聞いて、その人の喜びを感じると自分もぐっときます。
WWD:ブランドがショーを行う意味とは?
田中:ショーは美しいイメージを伝えることを目的としているものもあれば、着ることを前提にしたコレクションもあります。服は着てもらってその良さは伝わるものだと思っているので、着ることを前提にしたショーにしたいです。
WWD:ショーと展示会だとアプローチの仕方が違う?
田中:展示会は、そのシーズンのコレクションをルックブックで見てもらい、商品を着てもらってバイヤーさんなどのお客さまに服について伝える。商品と商品の単体での説明であって、大きなまとまりとしては見てもらいづらい。それに比べてショーはもう少しブランドを深く知ってもらえるのかなと思います。今回のショーを通じて商品に興味を持ってもらい、「ザ・ダラス」の世界観をより多くのお客さまに知ってもらいたいです。
WWD:今回を機に、今後もショーを続ける?
田中:続けていきたいです。でもあまり焦って準備はしたくないので、時間に余裕を持ってじっくり作りあげていきたいです。ショーが完成した時に喜びを感じて、次のシーズンに繋げたいと思います。ただショーはブランドの世界観を見せることなので、モノだけでなく空間も作り上げなくてはいけません。今後、服と空間のイメージがぴったり重なったときにまたショーをやりたいですね。
WWD:来場者へのメッセージを
田中:良い映画を観たあとのようなハッピーな気持ちになってもらえたらうれしいです。見終わったあと、「あの服がよかった」「あの見せ方がよかった」 って話したり、ツマミにしながらお酒を飲みに行ったりして欲しいですね(笑)。