「i-D」や「ヴァイス(VICE)」「ヴァイスランド(VICELAND)」などのメディアを運営するヴァイス メディア(VICE MEDIA以下、ヴァイス)のシェーン・スミス(Shane Smith)最高経営責任者(CEO)が退任し、後任にA+Eネットワークス(A+E NETWORKS)社長兼CEOを4月に退任するナンシー・デュバック(Nancy Dubuc)が就任する。スミス前CEOはエグゼクティブ・チェアマンに退き、デュバック新CEOのパートナーとして、戦略的取り引きやコンテンツ開発に注力する。
デュバックはすでに同社の取締役会のメンバーで、A+Eネットワークスが2015年にヴァイスに投資したことで、現在急成長しているテレビチャンネル「ヴァイスランド」がスタートした。
スミス前CEOは、デュバックを迎えることを明らかにしたのは「社内外に広がる憶測やウワサを鎮めるためだ。全ての契約などを終えてから公表したかったが、ニューヨークで報道陣に知られずに進めることは不可能なようだ」と、ヴァイス社員に送った文書で述べている。
「インディペンデントであるかないか、戦略的なパートナーシップを構築するかしないか、上場するかしないかにかかわらず、ヴァイスが成長するにつれて成長を管理し、企業の方向性をコントロールするためにトップクラスのマネジメントチームが必要になってきた。親友であり、メディア界のヒーローであるデュバックと働くことができるのは光栄だ。私とデュバックは現代のボニーとクライドのようだ。1930年代の強盗カップルのように、2人でみんなから金を巻き上げるよ」と、スミス前CEOは冗談を交えながら語る。
1994年にフリーペーパーとしてスタートした「ヴァイス」は、若者の支持を獲得して雑誌、ウェブメディア、テレビ番組などを抱えるマルチメディア企業に成長した。昨年は投資ファンドのTPGキャピタル(TPG CAPITAL)から57億ドル(約6000億円)の資金を調達している。また、「フォーブス(FORBES)」の報道によれば、スミス前CEOの総資産額は10億ドル(約1060億円)を突破しているとされる。
しかし、17年12月に「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」がヴァイス社内のセクハラ問題を詳細にレポートした記事を掲載した。ヴァイスは「ニューヨーク・タイムズ」に寄せた声明文で「社内に“ボーイズクラブ”的なカルチャーがあった」と認め、同記事で名前を報道されたアンドリュー・クレイトン(Andrew Creighton)社長には停職処分を、マイク・ゲルマーノ(Mike Germano)=チーフ・デジタル・オフィサーには解雇処分を下した。さらに、この問題が直接の原因であるかどうかは不明だが、米「ヴォーグ(VOGUE)」と2月末にスタートするはずだったコラボプロジェクトを無期限延期している。
スミス前CEOは、「2020年までに男性と女性の社員数を均等にし、世界で最も革新的な職場にする」とした計画を発表している。