「スウォッチ(SWATCH)」「オメガ(OMEGA)」「ブレゲ(BREGUET)」「ラドー(RADO)」などを擁するスウォッチ グループ(SWATCH GROUP)の17年12月期は、売上高が前期比5.3%増の79億6000万スイスフラン(約8915億2000万円)、純利益は同27.3%増の7億5500万スイスフラン(約845億6000万円)の増収増益となった。ニック・ハイエック(Nick Hayek)最高経営責任者(CEO)は、中価格帯の腕時計の需要が減りつつある中でも、「18年も好調は続く」と自信を見せる。
下期の業績が特に良く、18年に入ってからもその傾向は続いているという。中国からの強い需要に後押しされる形で、営業利益は同24.4%増の10億200万スイスフラン(約1122億2400万円)となった。「17年11月から18年2月まで、単月の売り上げがグループとして過去最高や、それに次ぐ2位、3位といった金額で推移している。3月も同様だ。景気は良く、われわれの商品もよくできており、革新性もある。好調が続かない理由がない」とハイエックCEO。そうした状況を受け、「『オメガ』では、需要に供給が追い付かないために、少々の納期遅れが発生している」という。
スマートウオッチの隆盛に対しても、ハイエックCEOはポジティブだ。「スマートウオッチは腕時計市場全体を底上げする。パイを食い合うことはない」と見る。同社は「ティソ(TISSOT)」で、19年に独自のシステムを搭載した新型スマートウオッチの発売を考えている。「ティソ」では既に、タッチパネルを搭載したモデルも販売している。
新モデルでは、個人情報保護に力を入れるとともに、バッテリーも3~6カ月もつようにした。毎年のようにソフトウエアのアップデートを求められることがないように、アップデート回数は制限するという。価格はティソの既存価格帯を反映し、400~1000スイスフラン(約4万4800円~11万2000円)になるという。
スイス時計協会は、200スイスフラン(約2万2400円)以下の腕時計の輸出額が、17年は前年比で11.6%落ち込んだと発表している。落ち込みの要因は主に“アップルウォッチ”だ。一方で、スウォッチ グループの17年度は記録的な好業績だった。同社は低価格帯の腕時計においても伸びているという。ハイエックCEOはそのことについて問われ、「小売店やバイヤーは低価格帯を避けるが、消費者の間では根強いニーズがあるからだ」と見解を示した。
ただし、エントリー価格モデルの腕時計による利益では、スイスフランの高騰により帳消しになってしまう。「われわれには長期的な戦略がある。だから低利益も許容できる」とハイエックCEOは語る。その戦略によって、厳しい為替状況の中でもシェアを拡大できているという。
スイスの独占禁止法により、スウォッチ グループの子会社ETAは、時計のムーブメントを2019年まで他企業へ販売する義務を負っている。しかし、同グループ内の「ブランパン(BLANCPAIN)」「オメガ」「ロンジン(LONGINES)」などを例に挙げながら、ハイエックCEOはグループ内でも生産が追い付いていない状況を述べた。それゆえに、「20年以降は他社への供給は行わないかもしれない」と語った。