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2月から「WWD JAPAN.com」では、5人のミレニアルズによる企画「目指せ未来のインフルエンサー」を連載しており、私はその編集担当として5人と接している。インスタグラムをまっさらな状態から始めて、1年間でフォロワー1万人のインフルエンサーを目指すという企画の中でそれぞれ試行錯誤や苦労を重ねている。5000〜10万フォロワーを抱える、いわゆるマイクロインフルエンサーを企業やブランドがPRに起用することは今や珍しい話ではなく、1万フォロワーともなればかなりの影響力を持つと言っても過言ではない。
それだけの存在になるということは、もちろん簡単なことではない。ただインスタグラムにフォトジェニックな写真を載せるのではなく、考えながら投稿しないといけない。質だけでなく量も重要だ。そういったインスタグラムに関するテクニックは、インフルエンサーマーケティングを行うリデルの神尾美沙先生が教えてくれる。神尾先生はリデルの社員であり、自身も1万フォロワーを抱えるインフルエンサーだ。
神尾先生は優しそうな見た目の通り、細やかに指導してもらっている。しかし、優しいだけではインフルエンサーを養成することはできない。最初の講義で神尾先生が5人に伝えたのは「1日3投稿、ハッシュタグは11個以上。『いいね』を300件つけにいき、月に500人をフォローする」というハードな課題だった。もちろん量だけでなく質も大切なので「これを達成するためには、最低でも1日3時間はインスタグラムのことを考えて。これができなければ1万フォロワーはむずかしい」と厳しい条件を突きつけていた。1日7時間睡眠を取り、通勤や仕事に9時間を費やすとしたら自由な時間は6時間。メンバーは学生が多いので課題やバイトもあるし、それぞれ生活もある。横で聞いていた私はあっけに取られていたが、5人の目は真剣そのものだった。
インスタグラムへの投稿はしばらくの間、神尾先生のチェックを経てから行われることになった。加工の仕方やブランディングについて教わったとはいえ、5人はまだ卵から孵ったばかりのヒヨコみたいなもの。毎日3枚を用意するのは至難の技らしく、LINEのグループで連日やりとりをしている。ある日私が夜中の3時に目を覚ますと、まだ会話のラリーが続いていた。会話の始まりは昼だから、3時間なんてとっくに超えている。5人の熱意もすごいが、神尾先生の熱血指導ぶりにも驚いた。そんな具合だから、メンバーたちは会うたびに「眠い」「ネタがない」とぴよぴよ鳴いている。
時間をかけて何を修正しているかというと、例えば写真の角度。写真の中の本が少し斜めになっているだけでもダメで、1mm単位の調整を繰り返す。さらにアカウントの投稿全体がきれいに見えるように、並びにダメ出し、明るさにダメ出し、さらにキャプションもダメ出しである。ひどい時には投稿内容がほぼ変更されている。
正直私だったらやりたくない、というよりもやれないだろう。それだけの苦労をしてでも彼、彼女たちはインスタグラムに真剣に向き合い続けている。その熱量こそがインフルエンサーという存在に価値をもたらし、一つのメディアとして人を惹きつける力があるのではないか。センスもテクニックも必要な素質だが、それ以上に根性や情熱がなければなれないものなのかもしれない。