ファーストリテイリング傘下の「ジーユー(GU)」とコラボレーションして3月21日に“キム・ジョーンズ ジーユー プロダクション(KIM JONES GU PRODUCTION)”を発売するキム・ジョーンズが、コラボレーションに関してインタビューに応じた。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON以下、LV)」のメンズ・アーティスティック・ディレクターを退任したばかりのキムは、コラボの経緯や、「ジーユー」と「LV」におけるクリエイションの違い、商品の一部やスペシャルロゴを配した限定アイテムを先行販売するドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA以下、DSMG)のポップアップ(17〜20日)などについて語った。
WWD:今回、なぜ「ジーユー」とコラボレーションすることにしたのか?
キム・ジョーンズ(以下、キム):10年前に休止した、「キム・ジョーンズ」のコレクションを、今の若い世代に着て欲しいと思った。SNS経由で若い人から、「『キム・ジョーンズ』というブランドの洋服を着てみたい!!」との声を聞く機会が増えた。(「LV」で働き、有名になったおかげで)若い世代が僕のことを調べ、「キム・ジョーンズ」というブランドの存在を知り、興味を持ってくれたみたいなんだ。それなら、みんなが買える価格帯で商品を提供したい。そう考えた時、「ユニクロ(UNIQLO)」の姉妹ブランドである「ジーユー」が、価格とクオリティのバランスにおいて一番なんじゃないか、って思ったんだ。楽しくって、気軽に着られる。そんな洋服を、特に日本を中心とするアジアの若い世代に提供できれば、って思ったんだ。僕自身、さまざまな経験を通し、大きく成長した。あの時のクリエイションを蘇らせ、今も通用することを示すのは、面白いプロジェクトになりえるんじゃないかな、って考えたんだ。
WWD:今回のコレクションを、日本を中心とするアジアで販売するのは、なぜ?
キム:日本は、早くから「キム・ジョーンズ」というブランドを受け入れてくれた国の一つだから。コレクションを発表するようになって間もない頃、日本で全身「キム・ジョーンズ」の男の子を見て感動したのを覚えている。できれば故郷のイギリスでも発売したかったけれど、日本からローンチできて、とても嬉しいよ。
WWD:「ジーユー」でのクリエイションと、「LV」でのクリエイションは全然違う?それとも、どこか似ている?
キム:まったく違うものだ。まず、ターゲットが違う。そして「LV」のクリエイションは、最高級の素材を使い、最高の職人が形にするもの。そして藤原ヒロシやチャップマン・ブラザーズら、一流のアーティストが参画してくれた。一方の「ジーユー」は、10年前の僕自身のクリエイションが、今の時代にも通用することを示す試み。ある意味、僕自身の過去を祝うような、パーソナルなものだ。
WWD:「ジーユー」のクオリティについては、どう思う?
キム:この価格で、このクオリティの商品を生み出すことができるのは、本当に凄いこと。(4990円で販売する)デニムジャケットも、“デニムオタク”の友達からデニム工場の職人まで、皆に「刺しゅう入りのGジャンが、どうしてそんな値段で作れるの!?」って驚かれたし、僕自身も驚いた。ファッションが大好きな若い世代に、手の届く価格帯で商品を提供できるのは、本当にすばらしいことだ。元々、「ジーユー」の“お兄さん”ブランドである「ユニクロ」が、デザイナーと取り組むコラボプロジェクトは面白いと思ってきた。でも、「ジーユー」がデザイナーと協業するのは、初めてのこと。まるで真っ白なキャンバスに筆を下すかのようなチャレンジで、興奮したよ。
WWD:そんなコレクションをDSMGで先行販売しようと考えたのは、キム?
キム:皆を驚かせたかったし、僕自身の人生の節目をお祝いしたい気持ちもあった。エイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffe)=コム デ ギャルソン インターナショナル(COMME DES GARCONS INTERNATIONAL)最高経営責任者(CEO)兼ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)CEOは長年僕をサポートしてくれたし、“キム・ジョーンズ ジーユー プロダクション”も気に入ってくれた。何より、昔「キム・ジョーンズ」を買ってくれた人に、今度はDSMGで“復刻コレクション”を買って欲しい。
WWD:ラグジュアリーの「LV」とストリートの「シュプリーム(SUPREME)」を結びつけたり、ラグジュアリーで経験を積んだ自身をマスな「ジーユー」と絡め、さらにDSMGを巻き込んだり、相反するものを組み合わせて生まれる化学変化を楽しんでいる印象がある。
キム:今までと違うことをやらなくちゃ、新たなモノは生み出せないと思っている。それに、スニーカーのことなら(コラボレーションの経験がある)「ナイキ(NIKE)」が一番良く知っているように、これまでと違う“何か”に挑戦するなら、その道のスペシャリストと組むのが一番だ。ストリートのことなら(藤原)ヒロシや「シュプリーム」、スニーカーなら「ナイキ」。それだけのこと。常に心掛けているのは、どんなジャンルでも“クール”な人たちと働くことだ。若い世代に、手頃な価格で洋服を届けたいと思ったら、そのジャンルで一番“クール”だったのは、「ジーユー」だったんだ。
WWD:これを機に、「キム・ジョーンズ」を復活させるつもりは?
キム:全くない。今、インディペンデントなデザイナーを続けるのは、本当に大変。若いデザイナーは、心から尊敬するよ。
WWD:ということは、やっぱり将来は「LV」のようなラグジュアリー業界にカムバックする?
キム:今日は「ジーユー」のインタビューだから、答えられない(笑)。おかげで、いろんなブランドから連絡をもらっている。一つ一つ吟味し、ある時は「NO」と答えるし、ある時は「YES」と答えている。今言えるのは、それだけ。お楽しみに(笑)。
商品は3月21日、「ジーユー」国内の超大型店・大型店とオンラインストア、台湾の一部店舗とオンラインストア、香港の全店舗で販売する。