エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELGC)は、傘下にある「M・A・C」のシニア・バイス・プレジデント(SVP)兼グローバル・ジェネラル・マネージャーに、化粧品サンプルの定期便サービスとECサイトを運営する「バーチボックス(BIRCHBOX)」のフィリップ・ピナテル(Philippe Pinatel)前社長兼チーフ・オペレーティング・オフィサーを起用した。ピナテル新SVPは3月5日から4カ月間の社内研修に入る。「バーチボックス」に在籍する以前は、セフォラ・カナダ(SEPHORA CANADA)のSVP兼GMを務めていた。
また、20年間にわたって「M・A・C」をけん引したカレン・ブグリシ・ワイラー(Karen Buglisi Weiler)=グローバル・ブランド・プレジデント(GBP)は7月に現職を退き、業務をピナテル新SVPに引き継ぐ。12月31日までは顧問を務め、退社する。
今回のトップレベルの交代には、今日まで築いてきた年商40億ドル(約4240億円)の小売りビジネスを根本から見直し、グローバルな販路を構築する狙いがあるようだ。ELGCのファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)社長兼最高経営責任者はビナテルSVPについて、「ブランド理解を深め、ユニークな『M・A・C』のDNAに感情的価値を見出して欲しい。米国、海外ともに確かな成長を推進するため、そこで得たものは世界市場で新たな商機を見分けるのに役立つだろう」と述べる。
同社が上級管理職のポストにローダーファミリー以外の人材を迎えることは珍しく、今回の人事は一種の驚きを持って迎えられた。これを、“歴史的な変遷”というELGCのジョン・デムジー(John Demsey)=エグゼクティブ・グループ・プレジデントは、20年前にブグリシ・ワイラーGBPを採用し、彼女らと共に、当時トロントの1軒のヘアサロンだった「M・A・C」をグローバルなメイクアップブランドに成長させた。現在は世界106カ国で販売し、3400店舗を構える。
小売環境は大きく変わった。デジタル化の波でコンスタントに情報が与えられ、「M・A・C」はスピーディーな変化を求める新たな消費者の期待に応えきれず、米事業は減速。同社は巻き返しを図ろうと躍起になっている。米国内では、ショッピングモールの集客力が落ちて、デパートの売り上げが振るわない他、カラーコスメよりもスキンケアの需要が高まるビューティトレンドの影響を受けた。
さらに、セフォラ、ウルタ ビューティ(ULTA BEAUTY)などのビューティ専門店が急成長して話題をさらった。独立したショップで勝負してきた「M・A・C」だったが、2017年にウルタ ビューティ127店舗と同社サイトで販売をスタートし、新たな販路に活路を見いだした。また、12月にはサロン向けヘアケアブランド「バンブル アンド バンブル(BUMBLE AND BUMBLE)」とタッグを組んで、テキサス州・ダラスの高級ショッピングモールにヘアメイクのスタジオをオープンしている。
成長が見られた海外事業では、17年5月には中国のオンラインチョッピングモール「Tモール」に進出し、3月にタイの「エビアンドボディ(EVEANDBOY)」、10月にオーストラリアの「メッカ マキシマ(MECCA MAXIMA)」22店舗と同社サイトで販売を開始。また、18年にはセフォラ・ブラジルやセフォラ・メキシコでのローンチが続々と控えている。