エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL以下、エルメス)の2017年12月期決算は、売上高が前期比6.6%増の55億4900万ユーロ(約7158億円)、純利益が同11.0%増の12億2100万ユーロ(約1575億円)と増収増益だった。営業利益率は、コレクションの成功や生産拠点での高い生産力、為替ヘッジの影響により過去最高値の34.6%を記録した。
地域別の売上高は、ヨーロッパが同6.9%増、アメリカが同5.8%増、日本を除くアジア太平洋地域は特に中国がけん引して同9.5%増、その他の地域は同19.8%増、日本は同1.0%減の7億1600万ユーロ(約923億円)だが、現地通貨ベースでは同4.1%増だった。
商品カテゴリー別の売上高は、レザーグッズが同9.7%増、衣料・アクセサリーが同9.4%増、シルク・テキスタイルが同5.7%増、香水は8月に発売した新フレグランス「ツイリー ドゥ エルメス(Twilly d’Hermes)」が好調で同10.1%増だった。一方ウオッチは、アップル(APPLE)と第3世代の“アップルウォッチ エルメス(Apple Watch HERMES)”を発売したものの同0.3%減と伸び悩んだ。
エルメスはオンラインの売上高を明らかにしていないが、「4番目の規模のショップ」と位置付けている。モバイルはブランドのリーチを広げるためのエントリーポイントとして“モバイルファースト”を掲げ、中国とヨーロッパで新ECサイトを導入予定だ。アクセル・デュマ(Axel Dumas)最高経営責任者(CEO)によれば、カナダとアメリカですでに稼動している新ECサイトでは、モバイル経由のアクセスは全体の78%で、売り上げへのコンバージョンは大幅に増加したという。デュマCEOは「エルメスは百貨店やライセンシーと提携することを決めた他のブランドとは異なり、世界展開を自分たちでコントロールしたのと同様、ECサイトも自分たちで展開する。そのため開発は遅く、より緻密な進行が必要になるが、目標は可能な限りベストなプラットフォームを持つことだ」と語る。
ECサイトの購買者の75%が初めて「エルメス」を買う人で、今後3〜5年でオフラインとオンラインの差はより縮小し、購買者の80%がなんらかの形で事前にECサイトを訪問すると予測している。「全ての顧客をカバーするために、すでにオムニチャネル化を実現している。得意客はオンライン、オフライン両方でエルメスの商品を購入している」とオムニチャネル化についてデュマCEOは話す。
また、売上高の伸びが著しい中国市場について「中国人は驚異的なスピードで本物のクオリティーとクラフツマンシップを見極める審美眼を身につけてきた。中国の店舗を訪れた時、若い男性が『今は買えないけど、すぐにまた買いに来る』と私に宣言したんだ。西欧でこのようなミレニアルズがいるかどうかは疑問だ。中国は非常に若い市場。中国のミレニアルズだけが非常に裕福で、ラグジュアリーブランドを買う購買力がある。そのため西洋のビジョンをそのまま中国に反映するのは重要ではない」と経験談を交えてコメントし、「ラグジュアリーブランドを買うようになった人々が最終的に『エルメス』に行き着くことがわれわれの目標だ」と締めくくった。