皆さん、おはようございます。取材先のバーゼルと、滞在先のチューリッヒ。その道中の1時間で、書ける限りの記事を書いてみようという時計連載の第3回、今回は「
シャネル(CHANEL)」です。ファッション最高峰の「シャネル」は、時計の世界でも頂点を極めようと、毎年スゴい新作を続々発表しています。が、時計ブランドと違うのは、やっぱり「シャネル」の時計はファッションであり、その美的感覚は時計専業ブランドには存在しないものだったり、思い浮かぶものでさえなかったりすること。今日は、そんなお話です。
「シャネル」の今年一番の新商品は、まるでブレスレットな“コード ココ(CODE COCO)”です。
これは、みんなが「シャネル」と聞いた時に思い浮かべるあのキルティングバッグ“2.55”のクラスプ、いわゆる留め金が着想源。あの留め金が、そのまま時計のデザインになっているのです。付け方も、フラップを被せてクラスプをパチンと回転させるだけのバッグと全く一緒!セラミックやステンレススチールのブレスレットは、キルティングパターンで、バッグの“2.55”が、時計になったらこんなカンジです。
スゴいのは、留め金が文字盤の中央にドカンと居座っちゃったところです。この発想、時計ブランドからは絶対出てこないものです(笑)。だって時計ブランドにとっての文字盤は、顔のような存在。キレイに作った文字盤はしっかり見せたいと思うのが人情ですし、業界では「視認性」という価値のもと「文字盤は、なるべくハッキリ&スッキリ見せる」が当たり前になっています。
でも、究極言い切ってしまえば、正しい時刻はスマホで知ることのできる時代。特に今の女性は、時刻を知るためだけに時計を身につけているワケではないでしょう。「シャネル」は、そんな女心を一番よく知っています。だったらアイコンを一番よく見える場所、時計における指原莉乃ポジションに置いちゃえ!というのが“コード ココ”の考え方です。見るたびに、「『シャネル』な自分」にウキウキしちゃう、時計でありアクセサリーな一本です。
そして、セラミック時計と聞かれたらコレを思い浮かべる人も多いハズな“J 12”からは、「マルケトリー」という超絶なクラフツマンシップを駆使した新作が投稿します。
「マルケトリー」とは、箱根名物の寄木細工みたいな技法。2つ以上のパーツをキレイに削り出して、ピタっとハメることで柄を描く技法です。ただこの「マルケトリー」、普通の素材でさえ大変なのに、ステンレスよりも硬いセラミックで作るのは本当に大変!しかも文字盤のみならず、ベゼルも「マルケトリー」で装飾し、その柄がベゼルから文字盤に自然と続くように仕上げています。これもまた、メッチャ大変なテクニックです(と、先程から自分が作ったかのように主張しておりますがw)。
で、そんな「マルケトリー」で描いたのは、“J 12”らしく時計らしい、1から12までのアラビア数字。しかもなかなかアバンギャルドなデザインです。この可憐と大胆とか、クラフツマンシップとアバンギャルドという2面性もまた、ファッションが得意なブランドらしく、「シャネル」らしいと言えるでしょう。
でも作るのが大変なので「マルケトリー」の時計は、1から12まで、それぞれ1本ずつしか存在しません。こりゃ、世界のお金持ちの間で争奪戦が起こること必至ですね(笑)。特にラッキーナンバーの7とか、末広がりで縁起がいい8、「シャネル」に縁の深い5とかは、競争率が高そう!ちなみに、12本一括購入、というリクエストも受け付けているそうです。
こちら、文字盤の上にシルバーの装飾で12を描いたバージョンは、世界1200本限定で販売します。