三井不動産が手掛ける「東京ミッドタウン日比谷(TOKYO MIDTOWN HIBIYA)」がいよいよ3月29日に開業しますね。TVコマーシャルをはじめ、さまざまなメディアで紹介されています。話題の飲食店、ファッション、映画館など、いろんな切り口で紹介されていますが、私は中でも「ヒビヤ セントラル マーケット(HIBIYA CENTRAL MARKET)」の内覧会に行ってきました。事前にその“仕掛け人”に取材をしていたので、実際にどんな店舗になったのか楽しみにしていました。(「WWDジャパン」2月19日号と3月5日号の紙面でも前編・後編として掲載しているのでそちらもぜひ!)
その仕掛け人とは、有隣堂の松信健太郎・専務取締役と、セレクトショップ、グラフペーパー(GRAPHPAPER)などを手掛けるクリエイティブ・ディレクターの南貴之アルファ代表です。この2人がタッグを組んで、ユニークでカオスな空間を作り上げています。
3階の783平方メートルの広大なスペースでまず目に入ってきたのが、「理容ヒビヤ」です。昭和にタイムトリップしたかのようなサインポールが入り口でグルグル回っています。中に入ると女性が顔そりの体験をしていました。月に1回女性専用デーを設けるそうです。椅子やシェーバー、置いてある小物も全て懐かしい雰囲気です。南ディレクターいわく「いろんなお店が雑多に集積するマーケットのような空間を作りたかった。タイに行った際、青空床屋を見て、床屋をここでやってみたいと思った」と話していました。店名は日本語でも表記しており、リリースには「日比谷 中央 市場街」と書いてあります。その名の通り、近代的なビルの中に海外の市場のような、エネルギーに満ちた空間を作りたかったのかもしれないですね。そしてこの「理容ヒビヤ」は、近隣のオフィスワーカーの癒しの空間になりそうです。
床屋の奥に行くと「一角」という居酒屋があります。屋内なのに屋台っぽい雰囲気で、お隣の席に合流してしまいたくなるようなカジュアルな空間です。「唐揚げにハイボールが似合う場所」をイメージしているそうです。そしてその延長には書店、雑貨、コーヒーの3社が組んだキオスクのようなコーヒースタンドがあります。看板のロゴもなんともレトロ!ファッションやインテリア雑誌のみならず、「少年ジャンプ」や「少年サンデー」「少年マガジン」などの漫画雑誌や懐かしい文房具が並んでいて、大人には懐かしく若者には新鮮で、なんとも楽しいコーナーです。
ファッションでは、南ディレクターが手掛けるセレクトショップ、グラフペーパーがあります。渋谷区神宮前にある旗艦店はメンズが7、8割ですが、この店舗はウィメンズがメーン。海外から買い付けたビンテージの家具も販売しており、シャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand)とピエール・ジャンヌレ(Pierre Jeanneret) が1948年に制作した棚(324万円!)や、ジャック・アドネ(Jacques Adnet)の椅子といった、家具好きにはたまらないラインアップになっています。
「ヒビヤ セントラル マーケット」の中心にある「ライブラリー(LIBRARY)」は松信・専務取締役や南ディレクターが選んだ本が並んでいたり、民芸の雑貨や服を置いていたりします。さらにフランスのビンテージがそろう眼鏡専門店「コンヴェックス(CONVEX)」もあります。常連になったら教えてくれる掘り出しモノもあるそうですよ。
こうして店内をぐるっと周ってみると、有隣堂が仕掛けているにもかかわらず、本の割合が少ない印象です。「目的がなくても一日中過ごせる老若男女の居場所を作りたい」というのが松信・専務取締役の思いだそうです。「有隣堂は明治42年の創業。本を読みながらクリームソーダが飲めるなど、当時としては画期的なことをしていました。当社にはそのような新しいことにチャレンジするDNAがあるんです」と話していたのが印象的でした。南ディレクターも「この『ヒビヤ セントラル マーケット」は、季節や集う人に合わせてこれからどんどん変化していくと思っています』とのこと。これからどんなふうに進化していくのか楽しみです。