エアークローゼット(AIRCLOSET)のパーソナル・スタイリング・サービス「ピックス(PICKSS)」が3月28日にサービスをリニューアルした。新機能として、手持ちの服とのスタイリング提案を実現する「マイクローゼット」と、自分の好みをスタイリストと共有し、シーズンや気分によってアップデートできる「スタイルカルテ」を導入した。取り扱いブランドは「ナノ ユニバース(NANO UNIVERSE)」「アダム エ ロペ(ADAM ET ROPE)」などが加わり、計20に拡大した。これに伴い、天沼總・社長が東京・青山の本社で、世の中のショッピングの潮流と、自社のサービスポイントと将来のポテンシャルについて会見を行った。
2015年にスタートした月極めのファッションのシェアリングサービス「エアークローゼット」のキーポイントが「お客さまとファッションとの新しい出合い」であるのに対して、昨年10月にスタートした随時注文型のパーソナル・スタイリング・ショッピング・サービス「ピックス」は、「忙しい女性に向けた“選ばないお買い物”スタイルの提案だ」と天沼社長は説明する。
「女性活躍推進法によって、働く女性はますます増えてくる。そんな中で、『街中で欲しい服を一日中探したけど見つからなかった』『eコマースもあるけれど選択肢が多すぎて迷って選べない』といった“買い物疲れ”が見えてきている」と指摘。
「苦痛となっている選ぶ時間を、信頼できる第三者、プロのスタイリストに任せることで、大切な人と過ごしたり自己研鑽など価値ある時間に変えていただく。移動せず、普段の生活を過ごしながら、自分に合う新しい服を見つけていただく“ファッションディスカバリー・サービス”として『ピックス』を使ってもらいたい。お客さまの生活に寄り添い、時間価値を最大化したい」と語る。
「ピックス」の類似サービスとしては、米国で11年にスタートし、昨年ナスダックにも上場したスティッチフィックス(STITCH FIX)がある。AI(人工知能)と3500人を超えるスタイリストを活用した、自宅で試着可能なパーソナル・スタイリング・サービスを軸に、6年間で売上高1000億円を超える規模にまで拡大している。天沼社長は「大きく飛躍している背景には、“選ばないお買い物”“パーソナル・スタイリング”がある」と指摘し、「ピックス」の成長の可能性を示唆した。
また、マーケット環境が異なる米国と同じ流れが日本にも到来するのかという点については、「昨年10月に『ピックス』をスタートした。そして、今年2月に大手2社、スタートトゥデイ(STARTTODAY)が『お任せ定期便』、ストライプインターナショナル(STRIPE INTERNATIONAL)が『ストライプデパートメント(STRIPE DEPARTMENT)』を発表された」と指摘。
各々の特徴として、同社がまとめたのは、「『ピックス』はプロのスタイリストによるスタイリング提案で、すべて試着可能。使いたいときに使える都度の利用型だ。『おまかせ定期便』はゾゾタウン(ZOZOTOWN)販売員によるスタイリング提案をしていて、かつ、全て自宅で試着可能。数カ月に1度送られる定期便。『ストライプデパートメント』はプロのスタイリストによるスタイリング提案で、提案されたもののうち希望のものを試着可能。使いたいときに使える都度の利用型だ」というもの。
「ただし、共通点がある。第三者によるスタイリング提案が含まれていること。これは、“選ぶ”という行為自体の代替に向けて、全体潮流が動いているのではないか。もう一つは“パーソナル”で、マスで売っていくのではなく、パーソナルという価値自体に注力されている。店舗に行かずとも自宅で試着できるのも共通点だ。時間の使い方を変えていくという概念が大きく影響している。試着したもので気に入ったものだけを買う点も同じだ。実際に試して買えるという、これまでのeコマースにある種、“体験”が加わったところが大きな共通点だ」と分析する。
ECの売り上げは年々上昇しているが、天沼社長は「日本のEC化率は10%程度、先行する中国などでは25%ぐらいだ。15%の差があるが、そこに、“選ばない買い物”の伸びるポテンシャルがある」と自信を見せる。