サザビーズジャパン(SOTHEBY’S JAPAN以下、サザビーズ)で3月中旬、香港ジュエリー・オークションの東京プレビューが開催されました。サザビーズといえば、1744年にロンドンで設立された最も歴史のあるの競売会社。オークションというと閉ざされた存在に思いがちですが、欧米では高額品からそうでないものまで、幅広いアイテムが競売にかけられます。
プレビューでは、4月3日から香港で開催されるジュエリーのオークションに出品される約300点のうち、約50点が展示されました。1920年代に制作された「カルティエ(CARTIER)」のダイヤモンド・ブレスレットや「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」の“エジプシャン”リバイバル ブレスレット”をはじめ、希少なジュエリーが集められました。香港の開催ということもあり、最近は欧米であまり見られないヒスイのジュエリーもたくさん出品されるようです。
プレビューでは、サザビーズ香港のイボン・チュウ(YVonne Chu)宝石部門副部長が、サザビーズに関して、そして、オークションでジュエリーを買うということについて話してくれました。サザビーズは設立当時、書籍の競売からスタートしましたが、現在では絵画や宝石、ワインなど70以上のカテゴリーのオークションを行っているそうです。サザビーズでは、全世界で年間16回のジュエリー・オークションを開催。そのうち、ハイエンドのジュエリーを集めた“マグニフィセント・ジュエルズ”オークションが4月と10月に香港で、その後、ニューヨークとジュネーブで開催されます。香港では、ヒスイのジュエリーが約2割ほど占めるようです。一方、最大規模のジュネーブでは、貴族や王族が手放したジュエリーが集まります。中には、数十億円という高額品も出品されます。デザイン性の高い“ファイン・ジュエルズ”のオークションは香港で10月に開催され、数十万〜数百万円のジュエリーも多く出品されます。
チュウ部長は、「品ぞろえやバリエーションはジュエラーと同じです。中にはブティックの販売価格よりも安く落札されることもあります。製造中止になったものなどもオークションでは入手することができます」と話します。「カルティエ」などは、以前に製造した名作ジュエリーをオークションで買い戻してアーカイブに加えたり、モダンなデザインにアレンジしたりすることで知られています。チュウ部長は「『カルティエ』のヒスイのジュエリーを見たことはありますか?今は制作されていないようですが、以前は制作していました。米量販店のウールワース(WOOLWORTH)の創業者の孫娘であったバーバラ・ハットン(Barbra Hutton)が所有していた『カルティエ』のヒスイのネックレスは1994年に420万ドル(約4億3680万円)で落札され、2014年には2740万ドル(28億9600万円)で『カルティエ』が買い戻しました」と一例を話してくれました。
サザビーズでは、ウインザー公爵夫人が所有していたジュエリーのオークションを1987年と2010年に行いました。その際も同様に、初回の落札価格の何倍にも及ぶ価格で2回目に落札されたジュエリーがあるようです。このように、著名人が所有したものは、オークションの回数を重ねるたびに高額になるケースが多いそうです。また、ファンシーカラーのダイヤモンドなど希少性の高いジュエリーや、コレクターに人気のジュエリーもオークションに登場します。1940年代初期に登場した「ヴァン クリーフ&アーペル」のバレリーナクリップは戦時中、人々を明るい気分にさせてくれるジュエリーとして人気が高かったそうで、今でも店頭にないものを探すコレクターが多いようです。
「オークションへの参加は会場に行く他、電話、オンラインなどでも可能です。オークションは入札しなくても活気に溢れていて楽しめます。ぜひ、足を運んでみてください」とチュウ部長は言います。“マグニフィセント・コレクション”は夢のまた夢ですが、手頃な価格帯のファインジュエリーのオークションはのぞいてみる価値は大いにあると思いました。