4月20日に1周年を迎えるギンザ シックス(GINZA SIX)で3日、開業以来吹き抜けに展示されてきた草間彌生の「南瓜」に代わる新たな作品がお披露目された。作品を手掛けたのはフランス人アーティストのダニエル・ビュレン(Daniel Buren)で、10月31日まで展示が続く。
ビュレンは1938年、フランス生まれ。自身の論理に基づいた8.7cm幅のストライプ模様がトレードマークだ。2016年にはパリにあるフォンダシオン ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)をカラフルなストライプでジャックしたこともある。日本では、お台場にあるパブリックアート「25 porticos」などが有名だ。
今回吹き抜けに飾られるのは、得意のストライプ柄を施した三角形のフラッグで、ビュレンいわく、「何千羽もの鳥が空を飛び、一斉に方向を変えて消えていく光景を思い描いた」という。展示を監修する南條史生・森美術館館長は、「たくさんの旗を長方形のフレームの中に並べてあるが、ビュレンは数学的なこだわりが強く、同じ模様を作るためにもフラッグは全て8.7cm幅の倍数でカットされている」と作品を解説する。そうなると全体のサイズもある程度決まってくるわけだが、だからこそこの吹き抜けでしか表現できないものに仕上がったのだという。「このようにはじめからその場所に合わせて作られた作品を“サイト・スペシフィック・ワーク”と呼ぶが、この作品は、インスタレーションであると同時に彫刻のようなものだ」と評価する。規則正しく、吹き抜けに合わせて制作されたため、見る場所によってその表情は全く異なるのだという。
「なぜ、ビュレンなのか」。南條館長は、「日本中に“●●銀座”があるように、銀座は日本を代表する場所。ここに置くアートも日本を代表するものでなくてはならない。そうした思いで、開業から草間彌生の作品を展示してきた。そうすると、2回目を誰にするのか、草間彌生に匹敵する作品ということで、非常に難しい課題だった。今回は銀座が国際的な街であることに着目し、日本と縁がありながらも知名度の高い美術家を考え、ビュレンを選んだ」と教えてくれた。作品の国際性を考えると、たしかにフラッグの色からフランスらしさを感じることにもうなずける。
展示に合わせて、ギンザ シックスの外壁と銀座中央通りにも、1100mにわたってフラッグを並べた。「銀座にはもともとたくさんの画廊があったが、近年の銀座が違う展開に入ってきているように感じる。例えば、多くのブランドのショーウィンドウをアーティストに依頼することも一般的になったし、気鋭の画廊も増えてきた。そういった中で施設の外にアートを広げていくことも重要なのではないか」とその意義を説く。「一見アートだとわからない。でも、よく見るとお店の名前もメッセージも書かれていなくて、一種の違和感を感じるだろう。これが新たな試みだ」。
ちなみに、1kmにおよぶ“銀座最大級のアート”は5月6日までだそう。最後に、「ビュレンは銀座が好きなのか」と聞けば、「残念ながら銀座について特に言及はなかった。でも、昔偶然銀座を歩いていて彼に会ったことがあるから、熟知しているんじゃないかな(笑)」と答えてくれた。なお、姿を消した「南瓜」の行方については、この日も分からずじまいだった。