ファッション

神童、ブロンディ・マッコイ 「俺はスケボーをするアーティストで、その洋服を作るデザイナー」

 ブロンディ・マッコイ(Blondey McCoy)以上に神童という言葉が当てはまる者はいないだろう。イギリス人ながら中東レバノンにルーツを持ち、エキゾチックでミステリアスな顔立ちと短く刈り上げた癖っ毛、そしてスケートボード中に転倒して抜けたという前歯がなんとも愛らしい彼は、1997年生まれの弱冠20歳。「13歳の頃に出合ったスケートボードが俺を変えた」と、寡黙だった少年は“ボード”に魅了されることわずか数年でロンドンの気鋭スケートレーベル「パレススケートボード(PALACE SKATEBOARDS)」の中心メンバーとなり、レジェンドスケーターのマーク・ゴンザレス(Mark Gonzales)率いる「アディダス スケートボーディング(ADIDAS SKATEBOARDING)」にも籍を置くなど、世界で最も有名なスケーターの1人へと瞬く間に駆け上がった。

 だが彼は、“世界で最も有名なスケーター”であるだけでなく、ケイト・モスのモデル事務所ケイト・モス・エージェンシー(Kate Moss Agency)に所属し、「バーバリー(BURBERRY)」とのチームアップでニューヨークの街中に20mを超す壁画を描くなど、各方面で才能を発揮。中でもイギリスのユースとスケボーカルチャーを色濃く反映させた自身のブランド「テムズ ロンドン(THAMES LONDON以下、テムズ)」は、ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)でも取り扱われ、「フレッドペリー(FRED PERRY)」とのコラボは世界展開されるなど目ざましい躍進を見せている。そんな「フレッドペリー」との第2弾コラボの発売に合わせてブロンディが来日。「テムズ」の立ち上げから「フレッドペリー」とのコラボの経緯、サブカルチャーからメーンカルチャーへと変貌するスケボーカルチャーについて話を聞いた。

WWD:自身のブランド「テムズ」の立ち上がりの経緯は?

ブロンディ:俺はロンドンのテムズ川沿いにある中学校に通って、毎日川沿いでスケボーをしていたんだ。その頃はブランドを始めるだなんてとうてい考えていなかったんだけど、写真や絵をコラージュしてアートワークを作ったり、自分が好きなモノやアイデアをステッカーにしたりTシャツに落とし込むことにハマってた。それに周りの仲間が興味を持ち始めて、そいつらのために作り始めたのがきっかけ。だから俺にとって「テムズ」ってのは単なるブランドとして以上に、絆として大切な存在なんだ。正式にローンチしたのは2014-15年秋冬からだけど、前身は12年くらいからかな。

WWD:「フレッドペリー」とのコラボのきっかけは?

ブロンディ:俺がスケボーのカルチャーで良いと思っていることの1つが、“お気に入りのモノを着て滑ること”。それで「フレッドペリー」のポロシャツを着てスケボーをしているのを見た「フレッドペリー」がオファーをくれた。だから今回のコラボは自然なことだったよ。ちょうど「テムズ」のロゴが入ったポロシャツも作りたいと思っていたし、一から作るよりも生産体制が整ってるブランドの方がいいしね。

WWD:今回のコラボは2回目だが、前回から一貫したコンセプトやテーマはある?

ブロンディ:“「フレッドペリー」らしさ”をなくさないことかな。「フレッドペリー」のアイテムがベースなんだけど、どれも完璧。だから変化を最小限に、“「テムズ」らしさ“を加えることを意識したよ。

WWD:「テムズ」のロゴに「フレッドペリー」のロゴをミックスさせるアイデアは自分で思いついた?

ブロンディ:14歳だった12年くらいに思いついてはいたんだ。その頃はいろいろなものからインスピレーションを受けてとにかく作品を作っていたんだけど、アイデアを昇華する方法がとりあえず名前をミックスさせることしかなくてね(笑)。

WWD:「フレッドペリー」はもともとテニスウエアのブランドだが、そこに難しさは感じなかった?

ブロンディ:実家がウィンブルドンにかなり近いところにあったから、テニスがどれだけ影響力のあるスポーツなのかは知ってるけど、テニスについては正直何も知らない(笑)。でも俺が「フレッドペリー」とのコラボに感じた魅力は“テニス”の側面ではないから、デザインへの影響は少なかったよ。いまスケボーのブランドの洋服を着ている人が全員スケボーをやるわけじゃないみたいに、「フレッドペリー」を着る人はみんなテニス好き、ってわけじゃないだろ?そういうことさ。

WWD:ロンドンを基盤に持つブランド同士のコラボということもあってか、今回のアイテムの随所に古き良きイギリスを感じた。

ブロンディ:その通り!(笑)。コラボするにあたって「フレッドペリー」のアーカイブを見せてもらったんだけど、それを通して見えてきたモノは、プレッピーで学校の制服みたいなクラシックなブリティッシュルックだった。今回のポイントは、90年代にスポーツウエアが日常のファッションとして流行ったように、クラシックなブリティッシュルックの「フレッドペリー」のアイテムに「テムズ」のストリートウエアとしての要素を落とし込んだこと。あと、俺にとって初めてウィメンズウエアのデザインに挑戦したことだね。

今回のウエアの多くが制服やユニホームをベースとしているんだけど、それって規則の中で着るものじゃん?その規則の中で、イギリスの若者たちそれぞれの自由奔放な姿をどう表現するかを考えて、ルックのモデルに全員俺の親友を起用したんだ。俺が作ったものをへんに飾り付けず、ありのままを見せたくてね。「フレッドペリー」は大きいブランドなのにやりたいようにやらせてくれるから、一緒に働けてうれしいし楽しいよ。

WWD:特にお気に入りのアイテムはある?

ブロンディ:いま着てるやつだね。今回の来日も含めて3週間くらいロンドンを離れているんだけど、毎日のように着てるよ。

WWD:今後、「フレッドペリー」以外とのコラボは考えられる?

ブロンディ:うーん、あまりブランドとコラボするのを良いことだとは思っていないんだ。最近はコラボが流行っているけど、どれもクリエイティブじゃないただ2つのブランドのロゴが入ったアイテムにしか見えない。だからもし他のブランドとコラボするなら、“お互いのことをよく理解している”っていうのが条件かな。じゃないと中途半端なものしか作れないしね。

WWD:過去に別のインタビューでも「金儲けのコラボは嫌いだ」と言うのを見かけたことがある。

ブロンディ:そうそう(笑)。商品をただ売ることが目的のコラボは好きじゃないんだ。だからコラボするなら、心を込めて、プライドを持って、誇れるものを作りたい。だからこそ「フレッドペリー」とのコラボはこれからも続けていきたいと思っているよ。

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