LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下のコニャックブランド「ヘネシー(HENNESSY)」は、「ワイルド ラビット(Wild Rabbit)」キャンペーンの一環で「パイヤー モス(PYER MOSS)」のデザイナー、カービー・ジーン・レイモンド(Kerby Jean Raymond)とコラボしたアパレルのカプセルコレクションを発売する。
今回の企画は、「ワイルド ラビット」キャンペーンの第5弾。これまで同プロジェクトは探検家親子のオーギュスト・ピカール(Auguste Piccard)とジャック・ピカール(Jacques Piccard)や、レーサーのマルコム・キャンベル(Malcolm Campbell)など、行動や業績を通じて人類の可能性を広げた偉人にスポットを当ててきた。だが、アパレルに挑戦するのは今回が初めてだ。
レイモンドが手掛けたコラボコレクション“MMT 140 x Pyer Moss”は、20世紀初期に一世を風靡したアフリカ系アメリカ人自転車選手のマーシャル・“メジャー”・テイラー(Marshall "Major" Taylor)にオマージュを捧げたもの。テイラーは、モントリオールで開催された1899年のICAトラック・サイクリング世界選手権で優勝し、かつて「自転車界最速の男」として知られ、“メジャー”というニックネームで人々に親しまれていた。
レイモンドはコレクションについて「テイラーは自転車競技界に蔓延していた人種差別に立ち向かい、その後同じような差別に直面した選手たちのロールモデルとなった人物だ。自分自身に打ち勝つことという信念が彼を偉大な人物にした。このコレクションには彼の偉大さを落としこんでいる」と語る。また、レイモンド自身のオートバイに熱中していた背景と、同じアフリカ系アメリカ人として人種差別に立ち向かう背景も、2人の共通点だという。レイモンドのランウエイデビューとなった2016年秋冬コレクションは、黒人少年が警官に射殺された事件を発端に生まれた「ブラック・ライヴズ・マター」運動に賛同するものだった。
コラボコレクションはレイモンドのストリートファッションと、テイラー選手が着用していたサイクリングユニフォームを融合させたデザインとなっており、MA-1やスエット、トラックパンツ、Tシャツ、キャップなどをそろえる。
コラボコレクションは、4月12日夜に開催されるイベントで披露され、6月から「パイヤー モス」の公式ECサイトで発売される。このプロジェクトの過程を収録したドキュメンタリーを、米スポーツTVチャンネルのESPNが製作。ラッパーのナズ(NAS)がナレーターを務めた。14日にNBAのプレイオフに合わせてテレビCM、SNSなどで同プロジェクトが公開され、ドキュメンタリーは22日にESPNより一般放送される。
なおコレクションの売り上げの一部は、スポーツにおけるダイバーシティーの拡大を目指し、アフリカ系アメリカ人団体によって設立されたNPO、ザ・ナショナル・ブラザーフッド・オブ・サイクリスト(The National Brotherhood of Cyclists)に寄付される。
ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でファッションを学んだレイモンドは「有り金を全て注ぎ込んで」2013年に「パイヤー モス」を設立。16年秋冬コレクションでランウエイデビューし、ミレニアル世代を中心にファンを増やしてきた。「リーボック クラシック(REEBOK CLASSIC)」とコラボした“DMX フュージョン(DMX FUSION)”は販売開始後2分で売り切れ、「リーボック クラシック」史上最速で売り切れたスニーカーとなった。また、ECサイト「エッセンス(SSENSE)」もこのスニーカーの発売が原因でクラッシュしたという。