ファッション

エスパスLVでベルトラン・ラヴィエ展 モノの見方が変わる?

 エスパス ルイ・ヴィトン東京(Espace Louis Vuitton Tokyo)は4月19日から11月4日まで、フランス人アーティストのベルトラン・ラヴィエ(Bertrand Lavier)の展覧会「Medley」を開催している。

 ラヴィエは、伝統的な芸術様式のカテゴリー分けを覆す作品を生み出したアーティストといわれ、1980年代および90年代のアプロプリエーション(流用)・アート運動に強い影響力を与えた。冷蔵庫やテーブルといった日常的な大量生産品にペイントを何層にも厚塗りした作品、もしくはありふれたモノを台座に置いたレディメイド作品で知られる。ラヴィエは1949年、フランス・シャティヨン=シュール=セーヌ生まれ。ヴェルサイユの国立高等園芸学校で、自身の芸術観に影響を与えることになる園芸を学んだ後、1970年代初頭からアーティストとして活動を始めた。

 来日したラヴィエは園芸とアートの共通点を、「園芸には接ぎ木という技術があるが、2つ以上のものを合わせて新しい何かを生む点は(自身の作品と)共通している。また、種を植えてから成長するまで時期を待つように、芸術も新しいものは認められるまで時間がかかる。そういった点も同じだ」と述べる。

 今回の展覧会について「一見すると作品はバラバラだが、そこにある感覚や波長に同じものを感じてもらえるはずだ。共通点は“不確実性”だ」と言い、その絵画と彫刻、描写と抽象、生活と芸術の間を浮遊するような作風が面白い。マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)のレディメイドの精神、ポップ・アートの大衆文化的イメージ、ありふれた要素を用いたヌーヴォー・レアリスムの手法をミックスして、ペイント、積み重ね、 台座への設置、拡大、本来のコンテクストからの隔離などで表現される彼の作品を、自ら「シャンティエ」 (工事現場) と呼んでいる。これは、オブジェを完成したものとみなさず、常に立ち戻って再び手を加える可能性を残していることを意味しているという。

 イタリアのデザイナー集団Studio55が制作した唇のカウチと冷蔵庫を積み重ねた作品「La Bocca sur Zanker(ツァンカーの上にラ・ボッカ)」について開口一番、「まず言いたいのは、すべての台座は冷蔵庫に似ている。冷蔵庫は台座に似ているとも言えるということ。この冷蔵庫は台座になろうとしているのがわかるだろうか。この作品ではさまざまな概念の不確実性を表現した。デュシャンのレディメイドとは逆のアプローチ」だと話し、さらに「美術館に展示されることでアートになったデュシャンの作品は、美術館ではなく道端に置くともとのものに戻り、作品の自立性はない。私の作品は、東京の庭に置いても彫刻として自立している。どちらがいいということではないが」と続ける。ちなみに、この作品はサルバドール・ダリ(Salvador Dali)がメイ・ウエスト(Mae West)の唇を称えてデザインしたカウチがもとになっているが、ダリ自身の作品もマン・レイ(Man Ray)からインスピレーションを得ていた。

 アメリカ人画家のフランク・ステラ(Frank Stella)のアイコニックなシリーズの作品「Empress of India 2(エンプレス・オブ・インディア2)」の素材を置き換えてネオン管で表現した作品については、「まずチューブの絵画に興味を持った。絵具で塗ったような作品をネオン管で表現したかったが、どのデザインが合っているか探した。2年間考えていたらステラの作品に出合った」と語る。「実は、彼は知り合いだけど作る前に許可は取ってない。というか、他の作品もすべて許可は取ってないんだ」と言いながらも「本人に会った時にステラは『私の作品よりもうまいかも』と言ってくれたよ(笑)」と茶目っ気たっぷりに語り会場を沸かせた。

 今展は、パリのルイ・ヴィトン財団監修の下、同財団が所蔵するコレクションの中から世界のエスパス ルイ・ヴィトン(東京、ミュンヘン、北京、ヴェネツィア)で未公開の作品を紹介する「Hors-Les-Murs(壁を越えて)」 プロジェクトの一環として企画された。

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