「そこはかとなくいなたくて、主張がありつつも生活になじむ」――それがメード・イン・USAの魅力だと思う。作りのよさでは日本製や中国製とは雲泥の差で、デザイン性ではイタリア製やフランス製に歯が立たない。歴史では英国に到底かなわず、だけどどこか引かれる。どんなやんちゃな愛犬も憎めないように……。
日本のバッグブランド「ブリーフィング(BRIEFING)」は1998年のデビュー以来、メード・イン・USAのバッグを作り続けている。今も約半分がアメリカ製で、平均価格は2万~5万円。生産を請け負うのはミルスペック(米国軍用規格)をクリアしたカリフォルニア州の工場で、軍用バッグの生産も行う。
98年当時、ミルスペックでタウンユースのバッグを製作するという試みは画期的であり、今では武骨なメンズスタイルに欠かせない。一方で20年の間にサラリーマンのカジュアル化は進み、ビジネスバッグでも「ブリーフィング」は圧倒的なシェアを誇る。毎日それも長時間、満員電車に揺られる日本のサラリーマンは、世界一バッグを酷使する人種ともいえる。彼らの需要に応えて余りあるのが「ブリーフィング」なのだ。
20周年を記念して、1月末から順次3アイテムが発売された。トートバッグの“ネオ キュビー”、機能派サコッシュを思わせる“ネオTショルダー”、キャリーバッグの“T-3”だ。いずれもブランドのメーン素材である1050デニールのバリスティックナイロンを使用し、アーカイブアイテムを今日的にモディファイしている。残念ながら発売当日に完売した“ネオ キュビー”をはじめ、3アイテムとも売り切れとなっている。しかし安心してほしい。12月に第2弾、7~8型が発売される予定だ。
バッグ企画歴30年の小雀新秀デザイナーに、ずばりメード・イン・USAの魅力を問うと「タフな素材使いと力強い縫製」と回答した。原油価格の安いアメリカでは、石油由来のナイロンの価格は日本のおよそ半分。そのため気兼ねなく使える。生地代より人件費がカギを握り、「アメリカでのモノ作りは、とにかく効率性を求める。労働時間が短ければ工賃が下がり、そのため裁断、縫製が少ないパターンがよいとされる」。アメリカ国内の人件費は年を追うごとに上昇しており、生地の取り都合より工程の少なさを重んじるのだ。それにパーツを組み合わせるより、生地1枚を折りたたんで縫う方が耐久性に優れる。「縫製も決してきれいではないが、通常7.5mmの縫い代を10mm取っており、強度は高い」と話す。一見デメリットにも思える要素をチャーミングととらえるのが、メード・イン・USAファンの心理なのだ。
冒頭でメード・イン・USAの魅力について触れたが、「異文化でのモノ作り」も加えておこう。スケールの大きさは雄々しさを生み、合理的なアプローチは機能美に結実した。計算づくではたどり着けない結晶だからこそ、僕らは心引かれるのだろう。